津波越流による海岸堤防裏法尻の洗掘に関して,ジオグリッドを法尻部に敷設する対策工法を考案した.平成28年度に小型水路で水理模型実験を行い,その効果を検討した.しかしながら,当実験では実現象に対して圧力が小さく,対策工の効果について定量的な評価に至らなかった.そこで,平成29年度に圧力レベルを増大させるため,津波越流を鉛直噴流で再現した水理模型実験を行い,様々な洗掘対策工法の効果について検討を行った.実験では,幅700mm,高さ600mm,奥行き350mmのアクリル水槽内に6・7混合珪砂を用いて地盤を作製した.また,外部に設置した水槽を上昇させることで液状化地盤を再現した.実験時は,装置上方に設置した管(直径31mm)より津波越流を模擬した鉛直噴流(流量:190 L/min,流速:4.2 m/s)を地盤表層に1分間作用させた.対策工として,直径10mmの水圧消散孔を設けたメンブレン,目合い2.5mmのジオグリッド,平均粒形15mmの砕石の3種類を対象に検証を行った.実験結果より,メンブレンおよびジオグリッドを設置した場合,対策無しの場合と比較して,最大洗堀深がそれぞれ約50,25%減少した.砕石を用いた場合,周囲の砕石が洗掘孔内に埋戻り,対策工の効果を評価できなかった.液状化地盤に対しては,対策無しの場合とメンブレンを設置した場合では,液状化していない飽和地盤と同程度の洗堀深であった.また,ジオグリッドを用いた場合,洗掘孔の斜面崩壊により埋戻りが生じたため,洗堀深は減少した.一方,砕石を用いた場合,液状化に伴う有効応力の減少により,砕石が沈み込み,最大洗掘深が増大した.これらの結果から,水圧消散孔を設けたメンブレンが洗堀対策工として最も有効であることがわかった.また,砕石を洗堀対策として用いる場合,流出や沈み込みを防ぐため,ジオグリッドなどで囲む必要があることがわかった.
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