研究課題/領域番号 |
15K18761
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉田 亮平 東京大学, 農学生命科学研究科, 研究員 (60724747)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ライブイメージング / リアルタイムRIイメージング / RRIS / 元素輸送 / 放射性同位元素 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
H27年度は、リアルタイムRIイメージングシステム(RRIS)を用いて、道管、篩管それぞれにおける元素の輸送速度解析を目的とした可視化技術を確立した。道管は死細胞、篩管は生細胞により構成されているため、加熱処理により篩管のみ機能を失わせて可視化を行った。はじめに、加熱処理により篩管流が止まるかどうかを検証した。検証には、篩管輸送として代表的な光合成産物を用いて行った。シロイヌナズナのロゼット葉にのみC-14標識のCO2を吸収させ、花茎に輸送されたC-14標識の光合成産物をRRISおよび、イメージングプレート(IP)により可視化した。その結果、加熱処理を行った領域より上部全域においては、C-14が検出されなかった。このことから、本研究条件により篩管流が止まることが示された。次に、加熱処理を行った植物、および無処理の植物にMg-28およびP-32をそれぞれ根に添加し、添加後24hにおいて、各RIが根から花茎に輸送される様子を可視化、さらには速度解析を行った。その結果、Mg-28においては、加熱処理による速度の変化はほとんど見られなかった。この結果より、Mg吸収24h以内においては、花茎内のMg輸送は道管流が大きな割合を占めることが示唆された。P-32においては、輸送速度が半減した。 ただし、今回行った速度の解析方法では、輸送されたRIのみならず、解析した領域に蓄積したRIも含まれるため、正確な輸送速度が算出できていない。この問題点を解決する方法として、H28年度実施予定としている数理モデル解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は、リアルタイムRIイメージングシステム(RRIS)を用いて、道管、篩管それぞれにおける元素の輸送速度解析を目的とした可視化技術を確立した。申請において、加熱処理により篩管が完全に止まらない可能性を考慮していたが、幾度の検証において、再現よく篩管流を止めることが確認された。そのため、篩管流を止められなかった場合に行う予定であった実験は割愛した。本研究の一部を纏めた論文が国際誌であるPlant & Cell Physiologyにて受理されたところである(印刷中)。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度において確立した、道管、篩管それぞれにおける元素の輸送速度解析に資する可視化技術により取得した画像は、輸送と蓄積の両者が含まれるため、道管流、篩管流の正確な速度を算出することが難しい。そこでH28年度においては、当初の計画通り、数理モデル解析を行うことで、さらに輸送量と蓄積量を分離して解析する。申請においては、プログラミングにて解析を行う予定であったが、近年、数理モデル解析を行う解析ソフトが多数出ており、プログラミングを行わずして直感的にモデルを組めるようになっている。そこで、これらの解析ソフトを利用した上で、必要に応じてプログラミングを組む予定である。数理モデルに用いるパラメータは単純化するため、手法開発の初期においては下方向への輸送を考慮する必要がない条件で行い、解析が確立するに伴いパラメータを増やす予定である。なお、数理モデルの解析を行うにあたり、この分野を得意とする研究者ともディスカッションを始めつつある状況である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿費や国際学会参加費の支払いが4月以降となったため、H28年度に予算繰越を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算は論文投稿費および国際学会費にて使用予定である。
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