研究課題
気候変動下(温暖化、CO2濃度上昇)のイチゴ生産においては、秋季の高温による花芽分化の遅延やCO2濃度上昇による光合成への影響が予想される。本研究では、クラウン部(成長点)の局所冷却による高温下での花芽安定誘導を検討するとともに、CO2濃度上昇による光合成促進を増収につなげるためのソース・シンク物質輸送プロセスの解明に基づく局所温度制御による果実への同化産物の転流促進を検討する。最終年度では、「課題Ⅰ:局所温度制御による高温下での花芽の安定誘導の検討」、「課題Ⅱ:ソース・シンク間での炭素・水の動態解析に基づく転流機作の解明」および「課題Ⅲ:局所温度制御によるシンクへの光合成産物の転流促進の検討」について、追加試験と成果の取りまとめを行った。課題Ⅰでは、昨年度までの結果に基づいてクラウン冷却による効果について、収量性を含めて検討し取りまとめを行った。研究期間全体を通して、温暖化再現環境下(昼温/夜温:30/27℃)において、28年度までの試験で同定した有効温度20℃でクラウン冷却を行うことで花芽が安定して誘導され、早期収量が無処理に比べて増えることが明らかとなった。課題Ⅱでは、ソース・シンク間での炭素動態を解明するために、イチゴ果実への同化産物の転流を11C法および13C法で調査した。果実への転流に対する葉位の影響を調べた結果、葉位によって転流の送り先や転流量に違いがみられた。期間全体を通して、果実や葉の生育ステージによって、転流活性、転流量、転流先に違いがみられることが明らかとなった。課題Ⅲでは、昨年度までの結果に基づいて植物体の一部分(クラウン、果実)の局所加温が果実への同化産物転流に及ぼす影響を13C法で調べた結果、局所加温によって果実への同化産物の転流が促進された。期間全体を通して、冬季低温条件下での局所加温によって転流が促進されることが示唆された。
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Acta Horticulturae
巻: 1156 ページ: 509-516
10.17660/ActaHortic.2017.1156.76