研究課題/領域番号 |
15K18764
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅野 里美 東京大学, 生物生産工学研究センター, 日本学術振興会特別研究員 (20586010)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セシウム / イメージング / カリウム輸送体 |
研究実績の概要 |
本研究は、植物栽培時の無機栄養元素環境が植物のセシウム吸収に与える影響を調べセシウム低吸収の農作物の栽培およびファイトレメディエーションへの応用のための新たな基礎的知見を得ることを目的としている。 27年度は、当初の計画に挙げていた栽培培地組成の組み合わせについての条件検討を行ったが、当初予定していた次世代シーケンサーでの解析までは至らなかった。一方、シロイヌナズナのカリウム輸送体のうちこれまでにセシウム吸収への寄与について報告されていない10遺伝子について遺伝子欠損株の種子を入手した。そのうち根から地上部への輸送に関わると考えられている遺伝子について注目し、その遺伝子欠損株でのセシウム投与実験を行った。遺伝子欠損株は、野生型株よりもセシウム含有培地での生育阻害されず、セシウムの毒性によるクロロシス耐性を持っていた。また、放射性セシウムの取り込み実験により野生型株は、遺伝子欠損株よりも2倍以上のセシウムを取り込むことを確認した。このことから、解析対象の遺伝子がシロイヌナズナのセシウム輸送に寄与することが示唆された。セシウム輸送へ関与する新規輸送体遺伝子の特定は、本研究の具体的な目的のひとつであることから、本年度に得られた結果を論文として発表することを次年度以降の計画において優先していきたいと考えている。今後は、論文化のために必要な追加実験の計画をたて次年度の計画を組み直していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析対象遺伝子のうち一遺伝子について遺伝子欠損株でのセシウム投与実験を進めることができた。その結果、野生型株と遺伝子欠損株との比較から、遺伝子欠損株は野生型株よりもセシウム吸収が抑制されていることが示唆された。セシウム輸送へ関与する新規体遺伝子の特定は本研究の具体的な目的のひとつであり、その目的達成に近づいたことから。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中にセシウム輸送能を確認できた遺伝子について論文発表を優先した実験計画の見直しを行う。論文化へ向けて、具体的には解析対象の遺伝子の培養条件による遺伝子発現変化を調べる事、セシウム投与による根と地上部の表現型の観察、カリウムとセシウムの植物個体内の含量測定を中心に行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降に計画していた遺伝子欠損株での実験が予想よりも期間を要するものと判断し、本年度から開始したため当初の実験計画とは異なった物品購入を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度予定していた、次世代シーケンサーでの解析および遺伝子発現解析用のための機器と試薬の購入に使用する予定である。
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