森林資源調査の分野において,地上型レーザスキャナが広く使用されるようになった.取得した点群からは,樹高,胸高直径,材積等が高精度に算出できることが示されている.これに伴い,点群からの樹種判別の要求も高まってきた.申請者らはこれまでに,樹幹部の点群に対する3次曲面当てはめに基づき,樹皮形状を明確に表す距離画像を作成し,これを深層学習に利用することで樹種を自動判別する手法を提案してきた.しかしながらこの手法では,枝葉が多い樹木,または幹が湾曲している樹木に対しては,安定な曲面当てはめが行えず,画像中に樹皮形状を捉えることができず,それゆれ判別率が低下しやすいといった問題があった.この問題に対し本年度は,反射強度と曲率を用いて樹皮形状を反映した画像を作成し,これを深層学習に利用することで樹種判別を行う手法を考案した.この手法では,反射強度は計測点群に付属しており,また曲率は点群上の局所領域で各点ごとに計算できることから,樹皮形状を安定にとらえることが可能となり,判別率の向上が実現できる.スギとヒノキを対象とした実験より,昨年度までの距離画像作成に基づく方法では91%だったった判別率が,最大主曲率を利用することで93%まで向上することを確認した.一方反射強度では88%程度にとどまった.また距離,最大・最小主曲率を画像のRGBにそれぞれ対応させた画像を作成し,判別実験を行った.複数の情報を総合的に評価できることから高い判別率が期待されたが,最大主曲率を単体で使用した場合には及ばず,91%にとどまった.
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