研究実績の概要 |
平成28年度はEGFRシグナリング伝達経路における卵子分泌因子(OSFs)の関与を解析した.リコンビナントBMP15, リコンビナントGDF9, リコンビナントBMP15/GDF9ヘテロダイマー, リコンビナントGDF9変異体をpro-mature 複合体として精製・作成した.精製・作成は研究協力者に依頼した.これら作成した卵子分泌因子およびEGRFのリガンドであるEGF様ペプチド(AREG)を卵子成熟培地に添加し,卵子の発生能を卵割率および胚盤胞形成率として評価した.結果,BMP15/GDF9ヘテロダイマーとAREGを添加した場合で最も胚盤胞形成率が高かった.一方,GDF9+AREGでは発生率の向上は認められなかった.このことはBMP15/GDF9ヘテロダイマーがEGFRシグナル伝達経路を増強させたことを示唆している.さらに,SMAD2/3およびSMAD1/5/8の阻害剤であるSB50512(SB),LDN193189(LDN)の影響を解析した結果, 成熟培地へのSBおよびLDNの同時添加により発生率が低下した.すなわち,BMP15/GDF9ヘテロダイマーによって刺激されたEGFRシグナリングの活性化増強にはSMAD2/3およびSMAD1/5/8双方が協調的に関与していることが示唆された.BMP15/GDF9ヘテロダイマーを成熟培地へ添加することで,生育可能ウシ卵子の効率的生産が可能になりうる.
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