研究課題
EGF受容体(EGFR)シグナル伝達系の活性化増強は卵子の発生能獲得において重要であることが明らかとなっているが、その機序については詳細になっていない。本研究において経腟採卵(OPU)に先駆けた卵胞刺激ホルモン(FSH)の漸減投与による卵胞発育処理、卵子の発生能が向上することを明らかにした。この高発生能卵子を取り囲む卵丘細胞の分子生物学的特徴をRNA-seqにより網羅的に解析した結果、EGF様ペプチドの応答性が増強していること、卵丘細胞の遊走・移動が抑制されていること、抗炎症作用が向上していることが明らかになった。すなわち、FSHによる卵胞発育処理が卵丘細胞-卵子間コミュニケーションを向上させることEGF受容体シグナリングを増強させることが示唆された。そこで、このFSH処理を体外で模倣するため、FSHのセカンドメッセンジャーであるcAMPモジュレーター(dbcAMPとIBMX)で卵子を全処理(pre-IVM)したこところ、体外成熟培養後の卵子の発生能が向上した。pre-IVMによりFSHもしくはEGF様ペプチド刺激後のEGF受容体リグナリングが増強し、また、卵丘細胞-卵子間の共役が向上した。さらに、卵子分泌因子とEGFRシグナリングの活性化増強の関係を解析するため、GDF9、BMP15もしくはGDF9とBMP15のヘテロダイマー(cumulin)を成熟培地に添加したところ、cumulin添加培地においてEGF様ぺプチドによって誘導されるウシ卵子の発生能が向上した。以上の結果、EGF受容体シグナリングはcAMPあるいは卵子分泌因子によって活性化増強されること、また、cAMPモジュレーターにより卵子を前培養する、あるいは卵子分泌因子を成熟培地へ添加することで体外でもEGFRシグナル伝達系を増強できる可能性が示された。
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Journal of Reproduction and Development
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10.1262/jrd.2018-009
Scientific Reports
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