浅胸筋におけるIGF-1/Akt/S6経路は、肉用鶏及び卵用鶏ともに1週齢以降成長に伴い下向き調節されたが、肉用鶏では孵化後から1週齢にかけては逆に成長に伴い上向き調節された。2週齢において、浅胸筋中のIRS-1のタンパク質量及びpAkt/Aktは卵用鶏に比べて肉用鶏において2倍以上の高い値を示した。また、孵化後の骨格筋IGF-1 mRNA量の増加は炭水化物やタンパク質の給与によって生じた。 4時間の絶食により、血中インスリン濃度の低下に伴い浅胸筋中のpAkt及びpS6のタンパク質量は肉用鶏及び卵用鶏ともに減少したが、骨格筋IGF-1 mRNA量に有意な変化は認められなかった。また、約4時間絶食した肉用鶏の浅胸筋pAkt及びpS6のタンパク質量はインスリン投与により増加した。 したがって、ニワトリ骨格筋では、血中インスリンが栄養状態に基づいてインスリンシグナル伝達経路の活性を調節する役割を果たし、骨格筋IGF-1はその活性の基礎レベルを決める役割を果たしている可能性が示された。また、骨格筋中のインスリンシグナル伝達因子の発現量は、卵用鶏に比べて肉用鶏において高いこと、及び孵化後のIGF-1遺伝子の発現上昇は炭水化物とタンパク質の摂取に起因する可能性が示された。 24時間絶食後の1時間の再給餌により、1週齢の肉用鶏及び卵用鶏の視床下部pAkt及びpFOXO1のタンパク質量は増加した。3時間絶食した1週齢の肉用鶏及び卵用鶏の視床下部pAkt及びpS6のタンパク質量はインスリンの脳内投与により増加した。また、自由摂食条件下における視床下部pAkt及びpS6のタンパク質量は肉用鶏と卵用鶏で有意な差は認められなかった。 したがって、血中インスリン濃度の生理的変化に応じてニワトリ視床下部のインスリンシグナル伝達経路は調節され得ること、及びその調節機構は肉用鶏と卵用鶏で差がない可能性が示された。
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