研究課題/領域番号 |
15K18771
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山本 ゆき 岡山大学, その他の研究科, 助教 (20645345)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アクチビンA / Smad2/3 / フォリスタチン / 卵管 |
研究実績の概要 |
1. ウシ卵管細胞に対するアクチビンAの作用 受精が起こる卵管膨大部ならびに初期胚発育が進行する峡部のそれぞれの部位について以下の検討を行った。 (1) ウシ卵管細胞におけるアクチビン受容体およびシグナルタンパク質 SMAD2/3 発現の検討:アクチビンA がウシ卵管のいずれの細胞に作用しうるかを検討するため,培養上皮および間質細胞におけるアクチビン受容体 および SMAD2/3 の遺伝子およびタンパク質発現を逆転写 PCR 法ならびにウェスタンブロット法にて検討した。各遺伝子発現はいずれの細胞にも認められた。しかし,機能的 アクチビン受容体および SMAD2/3 のタンパク質発現は上皮細胞でのみ確認された。以上よりアクチビンA が作用するのは上皮細胞であると考えられたため、以降の実験では上皮細胞にターゲットを絞って実験を進めた。 (2)アクチビンA を添加した培養液中でインキュベートしたウシ卵管の培養上皮細胞中における、リン酸化 SMAD2/3 (pSMAD2/3)をウェスタンブロット法にて検出した。検討したアクチビンA 添加濃度および時間において pSMAD2/3 の発現に差は認められなかった。これには,卵管細胞自身が分泌するアクチビンA が影響しているためと考えられた。よって,今後はアクチビン作用阻害因子のフォリスタチンおよびアンタゴニストである SB431542 を用いてアクチビンA の作用を抑制し,その影響について検討する。 2. ウシ精子に対するアクチビンAの作用:ウシ精子におけるACVR のタンパク質発現についてウェスタンブロット法を用いて検討したところ、アクチビン受容体1Bおよび 2A の発現が確認された。また、SMAD2/3 タンパク質の発現も明らかになった。このことから卵管液中のアクチビンAは精子に作用しうることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点において,卵管内におけるアクチビン関連因子と受容体発現を確認し,卵管内アクチビンAの標的となる細胞を決定している。卵管上皮細胞の添加実験を進めており,リン酸化タンパク質を検出するためのウェスタンブロット実験条件の決定にやや時間がかかったものの,現時点では当初の予定通りに進行している。精子における受容体およびシグナルタンパク質のタンパク質発現を明らかにしており,卵管内のアクチビンAの作用を受け可能性があることを明らかにしており,今後予定通り精子への影響を検討する予定である。 以上より,現時点でおおむね順調に進展していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
着実に結果を得るため,まずはウシ卵管細胞に対するアクチビンAの作用についての検討を優先し,以下のように遂行する。 1. シグナルタンパク質リン酸化の検討:アクチビン産生阻害剤を添加した上皮細胞におけるリン酸化 SMAD2/3 の発現を検討し,アクチビンが上皮細胞においてSMAD2/3 タンパク質のリン酸化を誘導するか否かを確認する。 2. アクチビンAによる卵管上皮細胞の遺伝子発現制御:上皮細胞にアクチビンA、フォリスタチン、アクチビン受容体拮抗剤 (SB431542) を単独又は共添加し,上皮細胞における遺伝子発現に変化が生じるかを明らかにする。当初の計画ではアクチビンAによって発現が変化する遺伝子の網羅的な検索を予定していたが,時間的および予算的に達成が難しいと判断し,まず卵管機能制御に重要な (1) 細胞増殖および生存性 および (2) 性ホルモン受容体発現,に関連する遺伝子発現に候補を絞り検討を進める。 上記の2 について見通しが立った時点で,ウシ精子へのアクチビンAの影響について検討を進める。予定通り,アクチビンおよびアクチビン阻害剤を添加した精子の生存性や運動性について検討を進める。
|