研究実績の概要 |
本研究の主目的は、日本産蚊によって媒介される鳥マラリア原虫(Plasmodium spp.)の遺伝子系統(在来系統)を明らかにすることである。国内における蚊と鳥からは、50系統以上の鳥マラリア原虫が報告されているが、国内で流行が起きている在来系統と外来系統との区別ができていない。これまでの研究により、渡り鳥を吸血した蚊から、日本の留鳥からは報告の無い原虫系統が見つかっている。日本産の蚊が、外来性の鳥マラリア原虫を取り込んだ場合、その後、国内で流行するかどうかは、日本産の蚊がベクターとして機能するか否かに左右される。国内における鳥マラリア原虫の媒介蚊を特定し、在来系統とが外来系統を把握しておくことは、外来性病原体の侵入および流行の拡大防止につながる。 蚊から鳥マラリア原虫を検出する方法として、これまでは原虫由来DNAを検出するPCR法が用いられてきたが、DNAの検出だけで媒介蚊を特定することは不可能であり、蚊の体内でスポロゾイト(感染期仔虫)が発育していることを確かめる必要がある。本研究では、従来のPCR法と顕微鏡検査法を組み合わせることで、鳥マラリア原虫の異なる遺伝子系統について、媒介蚊を明らかにする。 平成28年度は、鳥取県、新潟県、岡山県で蚊を採集し、鳥類マラリア原虫のスポロゾイトの保有状況について調べた。スポロゾイト陽性検体については、原虫の遺伝子系統を分析中である。また、宿主鳥類における血液原虫の感染状況を調べる目的で、鳥取県と新潟県において家禽および野鳥の血液を採取した。これまでにPlasmodium spp., Haemoproteus spp., Leucocytozoon sp.が検出されており、残りの検体についても分析を進めている。
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