研究実績の概要 |
本研究は、日本国内の鳥類および蚊から検出される鳥マラリア原虫のうち、国内で流行している原虫系統を明らかにすることを主な目的としている。日本では50系統以上の鳥マラリア原虫が報告されているが、どの原虫系統が日本の蚊によって伝播されているかは不明であり、在来系統と外来系統の区別ができていない。これまでの研究により、渡り鳥を吸血した蚊から日本の留鳥では報告の無い原虫系統が複数見つかっており、海外で流行している原虫系統が、渡り鳥によって日本に運ばれ、蚊に吸血され取り込まれた可能性が考えられる。日本産の蚊が外来性の原虫系統を取り込んだ後、国内で流行が起こるかどうかは、その蚊がベクターとして機能するかどうかに大きく左右される。したがって、鳥マラリア原虫の各系統について、媒介蚊を特定することは、在来系統と外来系統を把握する上で不可欠であり、新たな病原体の侵入および流行の拡大防止につながる。 平成29年度は、鳥取県と新潟県において、蚊(12種、約19,000個体)および鳥血液検体(22種、約250検体)のサンプリングを実施した。捕集蚊のうち、約5,000個体を解剖した結果、3系統の鳥マラリア原虫が少なくともオーシストの段階に発育していることが確認された。鳥類の血液検体については、血液塗抹の顕微鏡検査、およびPCR法によるDNA検査により、これまでに複数の遺伝子系統の鳥マラリア原虫が検出されている。現在、残りの検体についても分析を進めている。
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