研究課題/領域番号 |
15K18781
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
櫻井 優 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (00747967)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | てんかん / 神経新生 / アポトーシス / 神経病理 |
研究実績の概要 |
てんかんは脳の神経細胞の異常な興奮により、発作を繰り返す慢性の脳疾患である。てんかんの脳病変の特徴は神経細胞死であるが、近年、てんかんの発症に成体脳の神経新生に生じる異常が深く関わることが示唆されている。特に、異常な神経新生の結果、脳の海馬に形成される異所性顆粒細胞がてんかんの発症および重篤化に重要とされる。一方で、異常な神経新生により生じる新生細胞の多くはアポトーシスにより消失すると考えられており、異所性顆粒細胞にはアポトーシスを回避する機構が存在すると思われる。本研究では、ピロカルピン投与てんかんモデルラットを作製し、異所性顆粒細胞におけるアポトーシスの有無、およびアポトーシス抑制タンパク質の発現について検討した。ピロカルピン投与てんかんモデルラットでは、発作誘発から14日後に最も神経新生が活発となり、異所性顆粒細胞へと分化する海馬門に分布するDoublecortin陽性細胞が多数認められた。この海馬門に分布するDoublecortin陽性細胞は抗Cleaved caspase-3抗体に陽性を示し、アポトーシスを生じることが示唆された。また、てんかんモデルラットの海馬にはアポトーシス抑制タンパク質の一種であるInhibitor of apoptosis protein(IAP)陽性細胞が多数認められた。しかし、二重染色を行うと、IAP陽性細胞はGlial fibrillary acidic protein陽性細胞に一致しており、アストロサイトであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピロカルピンによる発作をラットに誘発後、7、14、21、28日後に脳を採材し、パラフィン切片を作製した。免疫組織学的に、未熟な神経細胞の分子マーカーであるDoublecortinを染色し、陽性細胞数を神経新生の指標とした。その結果、神経新生は発作誘発後14日で最も活発であった。また、異所性顆粒細胞となる海馬門のDoublecotrin陽性細胞も、発作誘発後14日で最も多く認められた。また、蛍光標識を用いた二重染色では、アポトーシスの指標となるCleaved caspase-3に陽性を示すDoublecotrin陽性細胞が海馬門に認められた。 また、てんかんモデルラットの海馬にはアポトーシス抑制タンパク質の一種であるInhibitor of apoptosis protein(IAP)陽性細胞が多数認められた。しかし、二重染色を行うと、IAP陽性細胞はGlial fibrillary acidic protein陽性細胞に一致しており、アストロサイトであると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、神経新生が最も活発に認められる発作誘発14日後のてんかんモデルラットを中心に検討を進める。新生神経細胞のアポトーシスについて、より詳細に検討するためssDNAなど他のアポトーシスマーカーの染色を行う。また、アポトーシス抑制タンパク質にはIAP以外に、Survivin、X-linked inhibitor of apoptosis proteinやNeuronal apoptosis inhibitory proteinが存在する。異所性顆粒細胞または海馬門の未熟な神経細胞におけるこれらの発現について検討を進める予定である。
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