研究課題/領域番号 |
15K18784
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
園田 紘子 宮崎大学, 農学部, 助教 (60608272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 尿中exosome RNAs / バイオマーカー / 薬剤性腎障害 |
研究実績の概要 |
本申請研究は、薬剤性腎障害ラットモデルを用いて尿中exosome mRNAおよびmiRNA(RNAs)の腎疾患バイオマーカーとしての有用性を検討することを目的としている。 平成28年度はPuromycin aminonucleoside(PAN)投与によるネフローゼ症候群ラットモデルを用いて検討した。 ネフローゼ症候群はタンパク尿、低タンパク血漿、浮腫および高脂血症を特徴とした症候群で、PANをラットに投与すると、糸球体足細胞が障害され、ネフローゼ症候群が誘発される。 SDラットにPAN(125 mg/kg)を腹腔内投与し、2、5および8日後に採血および採尿を行った。血液サンプルからは腎機能評価のためにBUN濃度を測定した。尿サンプルは総タンパク質排泄量を測定し、尿中exosomeを段階遠心法で分離したのち、RNAsを抽出し、miRNAのPCRアレイを行った。 BUN濃度は、PAN群ではcontrol群と比較して投与2日後で2.1倍、5日後で3.1倍、8日後で2.6倍となり、投与後5日で最も腎機能は低下した。尿タンパク質総排泄量は、2日後で1.3倍、5日後で20.3倍、8日後で34.5倍となり、時間経過とともに増加していった。尿中exosome RNAsは腎機能が最も低下していた投与後5日のサンプルを用いた。尿中exosome RNAsサンプルを用いてPCRアレイを行った結果、同定された全てのmiRNAは157種類、両群で同定されたmiRNAは63種類、PAN群のみで同定されたmiRNAは31種類であった。PAN群のみで同定された31種類のmiRNAをパスウェイ解析にかけたところ、腎の炎症や糸球体障害、繊維化のパスウェイが描出された。このことから、尿中exosomeに含まれるmiRNAにネフローゼ症候群のバイオマーカーとして有用なものがある可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は尿中exosome RNAs抽出法の確立について検討し、その成果をもとに平成28年度は薬剤性腎障害ラットモデルのうち、PANによるネフローゼ症候群モデルを用いた尿中exosome RNAsバイオマーカーを探索するための検討を行った。平成29年度はさらに抗Thy1抗体投与による糸球体腎炎モデル、シスプラチン投与による近位尿細管傷害モデル、Amphotericin B投与による遠位尿細管傷害モデルについて検討する予定である。これまでの成果から実験手技や解析方法については習得しているため、モデルさえ確立できれば順調に研究成果が得られるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はさらに抗Thy1抗体投与による糸球体腎炎モデル、シスプラチン投与による近位尿細管傷害モデル、Amphotericin B投与による遠位尿細管傷害モデルについて検討する予定である。この研究を遂行する上での課題はモデルの確立である。これまでに報告されている研究を参考にモデル作製を行うが、ラットの系統や試薬のロットなどによっては用量や傷害発症までの時間経過が異なる可能性が考えられる。その場合は予備実験を行い、試薬、用量およびサンプリング時点についてあらかじめ確認することで解決する。
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