自己免疫疾患罹患犬における可溶性CTLA-4の発現を評価するため、ELISAキットを用いて血清中の可溶性CTLA-4測定を行った。自己免疫疾患(39頭:SLE・天疱瘡様疾患:3頭、免疫介在性血小板減少症:11頭、免疫介在性溶血疾患:13頭、自己免疫性脳炎:6頭、自己免疫性関節炎:6頭)、健常犬13頭を用いた。その結果、可溶性CTLA-4濃度は自己免疫疾患で4.8±19.8、健常犬で7.6±18.2となり有意な差は認められなかった。可溶性CTLA-4が検出されたのはSLE・天疱瘡様疾患:0/3頭、免疫介在性血小板減少症:4/11頭、免疫介在性溶血疾患:1/13頭、自己免疫性脳炎:1/6頭、自己免疫性関節炎:1/6頭、健常犬5/13頭であった。一部の症例で治療経過との比較も行ったが、有意な変動は認められなかった。 これまでの検討により、人同様、犬CTLA-4のmRNAにおいてスプライシングにより可溶性CTLA-4が形成されること、さらに健常犬血清中において可溶性CTLA-4が存在することが明らかとなった。しかし、自己免疫疾患のマーカーとしての役割は明らかとはならなかった。その要因として犬の自己免疫疾患の診断自体が曖昧である点があげられ、多様な疾患を包括している可能性が考慮されることから、さらに症例を蓄積し検討を行う必要があるものと思われた。医学では可溶性CTLA-4は免疫調整作用を有しており、自己免疫疾患や臓器移植時の免疫調整に使用されている。犬の自己免疫疾患時において特異的な上昇はみられなかったが、本分子が存在することは実証されており、犬においても同様に治療薬としての可能性を示したものである。
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