研究課題
イヌのリンパ腫におけるエピジェネティクス特にDNAメチル化に関し、次世代シークエンサーを用いて新たな知見を得ることによってイヌのリンパ腫のメカニズムを解明することにつなげるため、平成27年度は以下の項目について検討を行った。DREAM(Digital Restriction Enzyme Analysis of Methylation)法の確立次世代シークエンサーを用いたDNAメチル化のゲノムワイド解析法であるDREAM法について、イヌのゲノムDNAを用いた解析が可能であるかどうか検討するため、今年度はまずイヌのサンプルを用いた検討を行った。申請者らが樹立したイヌリンパ腫細胞株2株よりDNAを抽出、制限酵素処理を行った後、アダプター結合からPCRを行うことによって、次世代シークエンサーに最適な目的のサイズを持ったライブラリ作製に成功した。DNAバイオアナライザー、およびリアルタイムPCRによる品質、濃度チェックにおいても次世代シークエンサーによる解析が可能であることが実証されたため、実際にランを実行した。その結果、2検体とも約800万-900万リードの配列解読が可能であり、これはのべ約2000万箇所のDNAメチル化の情報を得たことになるため、これまでの経験からもDNAメチル化のゲノムワイド解析を定量的、また統計的解析するに十分であると考えられる。現在、次世代シークエンサーより得られたデータから、リードの実際のイヌゲノムへのマッピング、さらには遺伝子座との関連などの処理を行っている。
2: おおむね順調に進展している
1.これまでのイヌ、ならびに獣医領域におけるDNAメチル化の研究はヒトの研究などから類推した限られた遺伝子のプロモーター領域に焦点を当てたものであるが、本研究ではゲノムワイドなDNAメチル化の可能であるDREAM法の樹立をほぼ完遂することができた。2.一方で、次世代シークエンサーの解析は費用が未だ高く、多検体を初期段階から試行することは難しく、多数の臨床検体の解析には至っていない。現在解析中のT細胞型リンパ腫に最適な比較対象として正常イヌから得た末梢血液由来のT細胞のソーティングを行い、次世代シークエンサー解析が可能な状態である、今後臨床検体を含めたさらなる解析を行う。
これまでの研究成果によって、イヌのサンプルにおいてもDNAメチル化のゲノムワイド解析が可能であることが立証できた。細胞株、正常細胞そして実際の臨床検体を用いて多角的な視点から解析を行い、DNAメチル化が関与するメカニズムの解明やDNAメチル化を用いた予後因子の開発などを念頭におき研究を推進していく。
多数の次世代シークエンサー解析を行う予定であったが、イヌのサンプルおよびイヌゲノムを用いたDNAメチルかのゲノムワイド解析が可能であるかどうかの確認のため、ライブラリ調整およびシークエンスの実行に当初予定より時間を割いたため。
次年度の消耗品費と合わせ、特に次世代シークエンサー解析費用に当て有効利用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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