研究課題/領域番号 |
15K18791
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 正利 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (50646411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 疼痛関連脳領域 / 犬猫 / fMRI / 種差 |
研究実績の概要 |
犬猫においてアルファキサロンの持続静脈内投与およびロクロニウムによる全身麻酔下で、鉗子により機械刺激を加えたときに生じる賦活化される脳の領域を調べた。その際、脳形態画像分析法であるvoxel-based morphometrywosiyousiteを使用して犬猫の標準脳を作成することが困難であったため、被験個体のなかで最も脳の形態が整っている個体の脳を標準脳の代替として採用した。 全身麻酔下にて鉗子による機械的な刺激を加えると、犬では視床、扁桃体、体性感覚野および帯状皮質の領域が賦活化されることが明らかとなった。一方、猫では体性感覚野、頭頂連合野、小脳、帯状皮質、海馬の領域が賦活化した。人では体性感覚野、扁桃体、帯状皮質は疼痛によって賦活化される疼痛関連脳領域に含まれることが知られており、犬と猫でも同様の領域が機械的な刺激により賦活化することが示された。また、猫では人の痛み関連脳領域とは異なる小脳の賦活化も観察された。 本研究により、全身麻酔下の犬猫において機械刺激が引きおこす脳の活動をfMRIにて評価することが可能となった。犬と猫では全身麻酔下であっても、機械的な刺激により人の疼痛関連領域と共通する部位が賦活化することが明らかとなる一方、犬と猫では賦活化される領域の一部に違いがあることも明らかとなった。これらの知見は、犬猫における痛みの伝達、認識、その抑制を理解するために有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全身麻酔下の犬猫において、機械的な刺激を加えたときに生じる脳の活動をfMRIで観察する方法が確立されたため、初年度の目標はおおむね達成できたと考えられる。 鉗子以外の刺激方法を試していないため、鉗子による機械刺激が痛覚を刺激して痛みに特異的な反応を生じさせていることの確認はされていないが、人の疼痛関連脳領域と同様の領域が刺激時に賦活化されているが確認された。したがって、鉗子による刺激は疼痛反応を生じさせ、その際の脳の活動の変化をfMRIにより観察することができている可能性は高いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、全身麻酔下の犬猫にオピオイドであるレミフェンタニルを投与し、鉗子による機械刺激を加えた際の脳の活動の変化を評価する。主に機械刺激で活性化される領域の活動の変化を観察し、レミフェンタニルの投与自体が引きおこす脳の活動の変化も評価することで、機械刺激が引きおこす脳の活動に対するオピオイドの役割を調べる。 機械刺激で賦活化する領域の活動の変化をより詳細に観察するための撮影条件を犬猫用に特別に作成する必要があるため、条件を検討中である。 また、レミフェンタニル投与による脳の賦活化の評価において、現在使用している機材では撮像時間及び枚数の用量が過多となり実施が困難となる可能性が高く、レミフェンタニルの投与方法や撮影条件を検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施する予定であった実験内容の変更や一部が実施できなかったため。具体的には、犬猫の標準脳を作成することが困難であるため被験個体の脳を標準脳として代用し、機械刺激以外の刺激を加えた際のfMRI撮像を行っていないため予定額と使用額に差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に実施できなかった実験を次年度に実施する。
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