Fascin-1はアクチン結合タンパクであり、生理的および病的状況下で細胞運動にきわめて重要な役割を果たしている。犬線維肉腫は口腔内や皮膚に発生し、外科的摘出が第1選択とされる悪性腫瘍であり、遠隔転移率は高くは無いものの周囲への浸潤能が高いため、局所再発率が高くまた頻回に再発する事が知られている。また人では成人における線維肉腫の発生率は10%であり、5年累積生存率は50%前後であるものの、治療法についての研究は進んでいない。そこで、今回犬線維肉腫におけるFascin-1の発現を確認し、Fascin-1発現を抑制する事によって浸潤を抑制する事か可能であるかを検討し、今後の治療方針の選択肢として挙げられるかを目的に実験を行い、人の線維肉腫の治療へ応用可能かを検討した。 まず、犬線維肉腫細胞株の樹立を行ったものの継代に苦慮したため、市販されている犬線維肉腫細胞株を購入し、人線維肉腫細胞株と共にFascin-1の発現と抑制実験を行った。 Fascin-1遺伝子のmRNAの発現はRT-PCRを実施し、細胞に対して免疫化学染色を実施することによって遺伝子の発現およびタンパク質の発現の確認を行った。また、犬繊維肉腫細胞株をマウスに接種する事によって異種移植性細胞株であることを確認している。 その結果を基に、siRNAを用いてFasin-1の遺伝子の発現の抑制を試みた所、犬繊維肉腫細胞株でFascin-1を弱く抑制する事が明らかとなった。
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