研究課題/領域番号 |
15K18793
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
東 和生 鳥取大学, 農学部, 助教 (50721841)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アミノ酸 |
研究実績の概要 |
今年度はまず、犬の脳腫瘍症例における血液中アミノ酸濃度変化を検討した。その結果、脳腫瘍症例では血中アラニン、プロリンおよびイソロイシンの濃度が有意に上昇することが明らかとなった。これらの血中変化は脳の器質的変化を伴わない特発性てんかん症例では観察されなかった。したがって、脳腫瘍の発生・進行に起因しているものであることが明らかとなった。 また、脳疾患とそれ以外の疾患(腎疾患、肝疾患、消化器疾患など)での血液中アミノ酸濃度変化の比較も実施した。その結果、各疾患にて特徴的な血中アミノ酸濃度変化が観察された。したがって、犬においても血液中のアミノ酸濃度変化をとらえることで、疾患の診断・予後判定が実施可能であることが示唆された。 さらに、血液中のアミノ酸濃度の基準値を作成するため、約500頭の臨床的に健康な犬を対象とし年齢・性別および犬種による血中アミノ酸濃度の比較を行った。その結果性別による差異は確認できなかったが、いくつかのアミノ酸では年齢による差異が見られる傾向があった。犬種間による比較では、犬種間に差が見られるアミノ酸が複数存在した。これらの変化は犬種によるアミノ酸代謝の変化を示すものである。犬種には、犬種特異性の疾患が存在し、それらの疾患の背景に特徴的な代謝変化が関連していることも予想される。 来年度は、猫での血中アミノ酸濃度の基準値作成を行う予定にしている。さらに、腫瘍の肺転移症例と肺原発腫瘍症例における血液中アミノ酸濃度の差異を検証する予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定よりも、健常動物での血液中アミノ酸濃度の基準値の作出に時間を要している。これは、申請者が想定していた以上に犬種等様々な要因が血液中アミノ酸濃度調整に関与しているためである。しかしながら、これらの知見は世界的に見てもまったく知られていない知見であり、今後の展開には非常に重要な知見である。同時に当初予定していた症例の収集も進んでおり、結果が出始めている。肺転移症例の集積には時間をやや要しているが、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度(最終年度)は、猫における血中アミノ酸濃度の基準値策定および肺転移による血液中アミノ酸濃度変化を明らかにすることを目的とし実施する。収集がやや遅れている肺転移症例の血液サンプルは、鳥取大学農学部附属動物医療センターの関連病院の協力も得ながら、実施する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたほどは血液サンプルが集まらず、試薬購入のための費用を使用しなかったためである。また、サンプル数が多くなりすぎなかったため、謝金(アルバイト代)の支出も必要なかったことも一因である。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度はサンプル測定のための試薬の購入に充てる。
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