本年は、セボフルラン単独および、セボフルランとレミフェンタニル併用、セボフルランとデクスメデトミジン併用、セボフルランとレミフェンタニル、デクスメデトミジン併用時の健常ビーグル犬の心機能及び腎機能に与える影響を比較検討した。その結果、セボフルラン単独と比較し、レミフェンタニル併用時は、心拍数の減少と、血圧、右心房圧、一回拍出量係数の増加が認められたが、肺動脈楔入圧、全身血管抵抗係数、尿量、尿比重、尿浸透圧、浸透圧クリアランス、自由水クリアランスに有意差は認められなかった。デクスメデトミジン併用時は、心拍数、心係数、尿比重、尿浸透圧の減少と、血圧、右心房圧、肺動脈楔入圧、全身血管抵抗係数、尿量、浸透圧クリアランスの増加が認められたが、一回拍出量係数に有意差は認められなかった。レミフェンタニル、デクスメデトミジン併用時は、心拍数、心係数の減少と、血圧、右心房圧、肺動脈圧、肺動脈楔入圧、全身血管抵抗係数の増加が認められたが、一回拍出量係数、尿量、尿比重、尿浸透圧、浸透圧クリアランス、自由水クリアランスに有意差は認められなかった。 次に、健康な犬の臨床症例における不妊手術で、セボフルラン、レミフェンタニル、デクスメデトミジン持続静脈内投与の併用効果を検討したところ、手術中の侵害刺激に対する交感神経反射の抑制作用が認められたが心拍数は減少し徐脈が認められた。また、尿量の増加や尿比重の低下は認められなかった。 結果から、犬におけるセボフルラン、レミフェンタニル麻酔とデクスメデトミジンの併用は、レミフェンタニルとデクスメデトミジンによりセボフルランの麻酔要求量が減少するものの、血管収縮と徐脈により心拍出量が減少することが明らかとなった。また、デクスメデトミジンの尿量増加作用はレミフェンタニルの併用により拮抗されることが明らかとなった。
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