研究課題/領域番号 |
15K18797
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
藤原 亜紀 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (40709755)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リンパ腫 / 猫 / 放射線 |
研究実績の概要 |
動物由来腫瘍細胞を研究材料として樹立された5種のネコのリンパ腫細胞株を用いて、さまざまな線量のX線を照射した。線量プロトコールは3群用いた。低線量群では3-17Gyを、高線量群では50-150Gyを照射し、照射後5日間細胞数を測定した。臨床的に用いられている線量群では週1回6Gyを6回、もしくは8Gyを4回照射し、1週ごとに細胞数を測定した。すべての試験はtriplicateで実施した。低線量・高線量群ではすべての細胞において日数経過に従って細胞数の減少を認めた。低線量群で細胞株Aが照射後4日、5日で有意に生存率が高く、高線量群においては細胞株Bが照射後3日、4日、5日で有意に生存率が高かった。また臨床プロトコール群に関しては、2週目にほぼ細胞が死滅した一方で細胞株AとBは3週目以降も有意に生存していた。3種プロトコールの結果より、細胞株A, Bが5種の中では放射線抵抗性であることが明らかとなった。また、150Gyといった臨床的には非現実的な高線量の1回照射と、臨床的に用いられている6Gyや8Gyといった線量を用いて毎週照射を行うことが同等の効果が得られたことは、有用な結果であると考えられた。 また実際のネコ鼻腔型リンパ腫症例において、放射線治療(追加で化学療法)を実施し、1年以上追跡し予後が判明している症例を抽出した。1年以上再発なく生存している症例を放射線感受性群とし、1年以内に死亡した症例を放射線抵抗性群とした。次年度はこれら症例の初診時治療前組織によって、トランスクリプトーム解析を実施し、その結果を基にすでに予後が判明している複数の症例を用いて検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度までに予定していた細胞株を用いた感受性試験は終了したが、トランスクリプトーム解析を用いた放射線感受性関連分子の探索には至らなかった。その原因としては用いた細胞株に鼻腔内リンパ腫由来のものは存在せず、決定した分子が実際の症例に該当しない可能性があるため実際の症例の腫瘍組織も用いることにした。予後(放射線感受性)の判明した症例の組織を用いるため、今年度は症例の決定のみ行った。また猫ゲノムの情報がいまだ少ないため、これまで猫に関連した次世代シークエンサーを用いた解析が行われておらず、条件設定から行っているためやや遅れた進捗状況であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の要となる猫ゲノムに関連したトランスクリプトーム解析が行われれば、猫ゲノム解析の基盤となると考えられる。しかしながら、猫ゲノム情報が少ないこと、おそらく腫瘍は多因子性であるので複数の因子が抽出されることが予想される。その場合には複数のネコゲノム情報を用いること、解析方法を複数用いる予定であるが、目的とする因子が判明しない時は放射線感受性に関わるとされる分子を一つずつ確認する方法を選択する。 また細胞株の培養について、猫鼻腔内リンパ腫はその解剖学的な理由から採取できる組織量が少なく、病理診断および遺伝子診断用の組織を除いたあとに残存する組織が少なくこれまでほとんど実施できていない。採取できる組織量についての解決策は難しいが、組織が豊富に採取できるときに積極的に実施していく必要があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象症例の変更のため、トランスクリプト―ム解析が終了せず、予定よりも使用が遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度トランスクリプトーム解析が終了する要諦なので本年度分を合わせて使用する予定である。さらに次年度は変更せず実施する予定である。
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