平成27年度・28年度にはネコリンパ腫細胞株5種を用いて、X線照射および抗癌剤の投与に対する細胞株の生存率を測定し、感受性株と抵抗性株を決定した。臨床例においては放射線抵抗性の鼻腔型リンパ腫症例において、化学療法も抵抗性であることが多いため細胞株を用いた実験の場合にも同様の傾向をとるることを予想した。1種の細胞株(A)は他種細胞株に比較して、明らかに放射線抵抗性を示した。6種の化学療法に対してはある1種の薬剤(B)は細胞株Aにおいて抵抗性であったが、他種薬剤においては細胞株間で生存率に有意な差は認めなかった。 平成30年度では、各細胞株において放射線および化学療法の感受性に関連した因子を探索するため、過去に感受性に関わると報告されているさまざまな20種類の遺伝子発現をリアルタイムPCRを用いて定量した。その結果、細胞株Aにおいて複数の遺伝子において発現低下が認められた。今後は治療反応および予後が判明している症例組織を用いて測定を実施する必要がある。 また、治療反応および予後が判明している猫鼻腔型リンパ腫症例の初診時の腫瘍組織を用いて、トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、治療抵抗群および感受性群において複数の遺伝子発現の差を認めたため、より多くの症例組織を用いて追加検討を実施している。細胞株を用いた実験から得られた因子との重複は認めなかったが、細胞株には鼻腔型リンパ腫が含まれていないため、症例組織を用いた研究がより必要と考えられた。
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