研究課題/領域番号 |
15K18798
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
田村 恭一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (00722282)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 犬 / 悪性黒色腫 / 免疫抑制 / DC-HIL |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、悪性黒色腫が発現するDC-HILによる免疫抑制機構の分子基盤を解明し、悪性黒色腫の免疫逃避におけるDC-HILの免疫学的意義を明らかにすることを目的とした。 まず、悪性黒色腫細胞が発現するDC-HILによる腫瘍増殖および免疫系への影響を検討した。その結果、野生型悪性黒色腫株化細胞と比較してDC-HILノックダウン悪性黒色腫株化細胞を皮下接種したマウス群では腫瘍体積が有意に減少しており、IL-2やIFN-γなどの活性化サイトカインの血清中濃度は有意に高く、抑制性サイトカインであるTGF-βの血清中濃度は有意に低かった。これらの結果から、悪性黒色腫細胞が発現するDC-HILは免疫抑制性に機能し、腫瘍の増殖を促進すると考えられた。 ついで、悪性黒色腫担がん状態における宿主側のDC-HILの機能解析のためにDC-HILノックアウトマウスを用いた実験をを行った。野生型マウスおよびDC-HILノックアウトマウスに野生型悪性黒色腫株化細胞を皮下接種したところ、野生型マウスに比べDC-HILノックアウトマウス群では明らかに腫瘍体積が小さかった。同様に野生型悪性黒色腫細胞を尾静脈投与した肺転移モデルにおいても、DC-HILノックアウトマウス群では明らかに肺転移病変が少なかった。また、野生型悪性黒色腫株化細胞を皮下接種したマウスの移植腫瘍近傍リンパ節および脾臓中の骨髄由来抑制細胞(MDSC)を精製し、その機能を解析したところ、DC-HILノックアウトマウスに比べ野生型マウスのMDSCは非常に強力なT細胞活性化抑制能を有していた。以上のの結果から、悪性黒色腫担がん状態では腫瘍細胞が発現するDC-HILだけでなく宿主側の免疫細胞が発現するDC-HILも免疫抑制および腫瘍増殖に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の本年度研究計画では、DC-HILを標的とした新たな免疫療法を開発するためにDC-HILの基礎的な分子基盤の解明を目的として悪性黒色腫細胞が発現するDC-HILの機能および宿主の免疫系が発現するDC-HILの機能についての検討を計画していた。 これまでの研究結果から、悪性黒色腫細胞が発現するDC-HILは免疫抑制性に機能し、腫瘍の増殖を促進することが推測された。また、悪性黒色腫担がん状態では腫瘍細胞が発現するDC-HILだけでなく宿主側の免疫細胞が発現するDC-HILも免疫抑制および腫瘍増殖に関与していると考えられた。これらのマウスモデルを中心とした実験結果により本年度予定していた悪性黒色腫の免疫逃避におけるDC-HILの免疫学的意義を明らかにするという目的は達成できたと考えられる。また、これらの結果はDC-HILを標的とした犬悪性黒色腫に対する新たな免疫療法を確率する上で非常に有用な情報であると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究結果から、平成27年度の研究計画は順調に進展しており、悪性黒色腫担がん状態におけるDC-HILによる免疫抑制機構の分子基盤を明らかにすることができた。そこで今後は、犬悪性黒色腫細胞のDC-HIL発現と担がん個体の免疫抑制状態の相関を検討するために、犬悪性黒色腫症例を用いて腫瘍組織中のDC-HIL発現量の評価および血清サイトカイン濃度と血中Tregの割合の測定を行う。さらに、抗犬DC-HIL抗体を作製し、犬悪性黒色腫細胞による免疫抑制作用の阻害効果について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたしていた旅費の使用がなかったために生じた未使用額
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会での発表のための旅費としての使用を予定している。
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