研究実績の概要 |
感染刺激を仲介する主要な炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン1の受容体の遺伝子欠損マウス(IL-1R1 KO)を実験に使用した。実験的な感染刺激として汎用されているリポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS、120 μg/kg)を 腹腔内投与し、摂食量、体温の変化および視床下部―下垂体―副腎軸の神経内分泌学的な応答を野生型マウス(WT)と比較した。 摂食量はLPSによってKOでもWTと同程度に抑制された。神経興奮の指標となる視床下部でのc-Fosの免疫陽性細胞数、血中のACTHおよびコルチコステロン濃度はLPSにおいてそれぞれ増加、上昇したが、遺伝子型間で有意な差は見られなかった。その一方で、KOでは脳脊髄液中のプロスタグランジンE2濃度上昇が抑制されており、感染性の発熱も低下していた。IL-1, IL-6, TNF-αなどの炎症誠意とカインの血中濃度は両遺伝子型でLPS投与により同程度増加した。 続いて血管内皮細胞特異的にIL-1R1を欠損したマウスにLPS処置を行った結果、上で用いたKOマウスと同様の発熱抑制がみられた。ここまでの結果から、血管内皮細胞に存在するIL-1受容体は末梢性の感染刺激を仲介して中枢性のプロスタグランジンE2産生を増加させ、発熱に寄与することが明らかとなった。
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