研究課題
本研究は、動物の生命活動を制御するホルモンの合成・分泌器官である下垂体の細胞供給システムを解明することを目的としている。具体的には、1. 成体下垂体幹・前駆細胞を追跡することが可能な遺伝子組換え動物を用いて、ホルモン産生細胞の元になる幹細胞を特徴付けること、および、2.下垂体幹細胞が分化してホルモン産生細胞を供給するシステムを明らかにすること、である。これまでに以下のように研究を進めている。1. 追跡実験に用いる遺伝子組換えラットの作出が遅れている。そこで、神経堤細胞を標識できるマウス(P0-Cre/EGFPレポーターマウス)を用いた追跡実験により、P0-EGFP陽性細胞が下垂体内に侵入してホルモン産生細胞へと分化すること、つまり神経堤細胞が下垂体幹・前駆細胞としても振舞うことを明らかにした。本成果は学術論文として発表した2. ラット下垂体に存在する2つの幹細胞ニッチのうち、下垂体の前葉実質層にしか存在しない幹細胞ニッチの分離に成功した。本成果は学術論文として発表した3. 分化機構の詳細を知るためには継続的に利用できる下垂体幹細胞株が不可欠である。マイクロアレイによる下垂体由来非ホルモン産生細胞株の網羅的解析の結果をもとに、幹細胞株の候補であるTpit/F1細胞の分化能を解析した。その結果、Tpit/F1細胞は成長因子などの添加培養により前葉実質層の幹細胞ニッチのような細胞塊を形成すること、そして、さらに培養を進めることで一部が成長ホルモン産生細胞へと分化することを明らかにした。本成果は学術論文として発表した
2: おおむね順調に進展している
遺伝子組換えラットの作出が遅れており一部の解析ができていない。しかしながら、別のマーカー遺伝子を用いることで下垂体幹・前駆細胞の追跡、幹・前駆細胞の捕集およびホルモン産生細胞の供給機構の解析について一定の成果は得られている。
1について:引き続き遺伝子組換えラットの作出を進めるが、同時に既存の遺伝子組換え動物を用いた解析を検討する。2について:幹細胞ニッチに存在する幹・前駆細胞がホルモン産生細胞へと分化するスイッチが未だに明らかになっていないことから、その候補因子としてアクアポリンの解析を行い、ホルモン産生細胞の供給システムの解明を目指す。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件)
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