研究課題/領域番号 |
15K18803
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
関 信輔 秋田大学, バイオサイエンス教育・研究サポートセンター, 助教 (60749167)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臓器作出 / 幹細胞移植 / インユーテロ法 / 異種間移植 |
研究実績の概要 |
臓器不全症の治療には臓器移植が有効であるが、ドナー不足や生体適合性の問題などを解決できていないのが現状である。そこで、移植可能な臓器を患者自身の細胞から作ることは再生医療の重要な目標の1つである。 研究代表者が参加している研究チームでは、臓器欠損動物の胚盤胞に正常多能性幹細胞を注入し臓器を作製する方法「胚盤胞補完法」で、動物体内に膵臓・腎臓などを作製することに成功している。しかしながら、この方法では、ヒト細胞が動物の神経や生殖腺に寄与してしまうことを懸念する倫理的問題のため、ヒトの臓器作出に応用できないのが現状である。そこで、本研究では臓器欠損マウス胎児に分化運命の決定している組織前駆細胞を局所的に移植する方法で異種体内での臓器作出を行うことを目指している。 この方法を遂行するには、マウス胎児に細胞を移植する技術が必要になる。現在までに、報告例は少ないものの、子宮を切開したのちでも、E11.5以降のマウス胎児は母体内で発生可能であることが報告されている(Muneoka et al. 1986)。しかしながら、溶液などの注入例はあるが、マウス胎児への幹細胞移植という研究は、あまり例がない。本課題研究では、初年度にして、マウス胎児へ細胞を移植したのちに、安定的に正常に発生させることに成功した。また、膵前駆細胞移植による膵臓の作出を目標にしているが、マウス胎児の膵臓は小さいため、直接膵臓へ移植することは困難であったが、胆管・膵管を介して膵臓と繋がっている肝臓に細胞を移植することで膵臓に細胞を移植することに成功した。そして、一部ではあるが、GFP蛍光を示す移植細胞由来の膵臓細胞が宿主マウスの膵臓内に形成されていることが観察された。研究成果については、平成28年5月日本実験動物学会総会にてポスター発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス胎児への幹細胞移植という研究は、あまり例がない。しかしながら、初年度にして、マウス胎児へ細胞を移植したのちに、安定的に正常に発生させることに成功した。また、膵前駆細胞移植による膵臓の作出を目標にしているが、マウス胎児の膵臓は小さいため、直接膵臓へ移植することは困難であったが、胆管・膵管を介して膵臓と繋がっている肝臓に細胞を移植することで膵臓に細胞を移植することに成功した。そして、一部ではあるが、GFP蛍光を示す移植細胞由来の膵臓細胞が宿主マウスの膵臓内に形成されていることが観察されたため。11月に研究代表者が異動したため、数ヶ月研究を中断したが、初年度の進捗状況としては、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、膵臓が形成され始めるE12.5のマウス胎児(ICR)へE14.5のマウス胎児から得られた膵前駆細胞の移植を行なっていた。本来、発生ステージを合わせるべきではあるが、宿主の発生ステージのE12.5のマウス胎児(GFP陽性)から回収できる膵前駆細胞の数は限られていたため、ドナーマウス胎児と宿主マウス胎児の発生ステージが異なっていた。平成28年度は、繁殖によりGFP陽性のマウスを増やしたのちに、E12.5のマウス胎児(GFP陽性)から多くの膵前駆細胞を回収し移植する予定である。その後、膵臓を欠損しているマウス胎児(pdx1ホモノックアウト)に膵前駆細胞を移植することで、膵臓を作出することができるかを検討する。また、pdx1ヘテロノックアウトマウス同士の交配から得られたマウス受精卵は凍結保存しているが、pdx1ホモノックアウトマウスの出現頻度は1/4以下に限られているため、効率の面で実験をすすめることができるか不安があある。そこで、CRISPR/Cas9によるノックアウトにより、高率にpdx1ホモノックアウトマウスを作出することが可能かも検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し請求を行ったが、異動先で共通で使用できる機器が一部設置されていたため、機器を購入する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
異動先で使用する実験動物のマウスの数を増やす必要があるため、その購入費および飼育使用料として使用する予定である。
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