本研究は、伝統的生態学的知識(TEK)に基づく植物資源利用に着目し、里山の管理放棄が深刻化する中山間集落におけるTEKを活用した地域の生物文化多様性の一体的保全の可能性を評価することを目的とした。研究の結果、知識や利用経験が消失しやすい資源植物に共通する生育地特性や利用形態が明らかになり、地域の生物多様性を代表する生態系ほど資源植物の供給力が高いことが示された。また、食を介した植物資源利用ほど、知識や経験が残存しやすい傾向が認められ、食文化の継承による生物文化多様性保全の可能性が示唆された。今後は景観特性が異なる全国の里山を対象とすることで、結果の妥当性や地域的特異性を検証していく必要がある。
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