研究課題/領域番号 |
15K18814
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
椿 俊太郎 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助教 (90595878)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロ波触媒反応 / 水熱反応 / ポリオキソメタレート錯体 / 固体酸触媒 |
研究実績の概要 |
マイクロ波によって選択加熱される固体触媒を用いることにより、固体触媒近傍に局所高温場を形成し、見かけ上温和な反応条件で触媒反応を促進することができる。そのため、マイクロ波照射したでの固体触媒反応は、難分解性バイオマスの加水分解条件の緩和にも有効であると期待される。そこで、マイクロ波によって局所的な高温場を形成する固体酸触媒として、活性炭担持ポリオキソメタレート錯体を作製した。セロビオースをバイオマスのモデル加水分解反応とし、マイクロ波照射下において(周波数:2.45GHz、マルチモード型オーブン)本触媒の活性を評価した。また、通常加熱として誘導加熱炉を用いマイクロ波照射条件と同一の熱履歴下にておいて上記と同様の反応を行い、マイクロ波照射の効果を調べた。マイクロ波加熱を用いた場合、通常加熱と比較して高いセロビオース糖化率が得られることがわかった。さらに、実バイオマスである大型藻類(ヒロハノヒトエグサ)の加水分解に対しても、マイクロ波照射下で還元糖収率が向上することがわかった。そこで、本触媒の活性化機構を解明するために、同軸プローブ法を用いてセロビオース加水分解の際の反応系の複素誘電率を測定した。マイクロ波の吸収を示す複素誘電率の虚部は、セロビオースの糖化率と正の相関を示した。すなわち、マイクロ波の吸収性に優れる固体酸触媒ほど、高い活性が得られることが示唆された。これは、マイクロ波照射下において固体酸触媒が選択的に加熱され、触媒近傍において高温の反応場が形成されたため、触媒活性が向上したものと考えられた。また、複素誘電率の虚部は固体酸触媒の酸点濃度に依存して高くなる傾向にあり、酸点のイオン伝導もマイクロ波吸収に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はポリオキソメタレート錯体を担持した固体触媒を作製し、触媒の性能評価および誘電特性解析について順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
触媒浸出をさらに抑えた触媒の作製と糖鎖の加水分解の際の反応条件の緩和を達成するため、ポリオキソメタレート触媒と活性炭担体の組み合わせを探索し触媒性能の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際会議における成果発表のための出張旅費について、他予算を充当したため予定と差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の差額は、本年度に成果発表のため参加を予定しているThe 37th Progress in Electromagnetics Research Symposium in Shanghai (香港)での出張経費として使用する。
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