研究課題/領域番号 |
15K18820
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
新屋 友規 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (80514207)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植食性昆虫 / イネ / 分子パターン / 植物免疫 / 植物-昆虫間相互作用 / 異物認識 |
研究実績の概要 |
植物の免疫機構において、「分子パターン」と呼ばれる外敵由来あるいは外敵攻撃時に生じるリガンドを植物が認識することは、有効な防御応答を示す上で重要な過程のひとつである。植食性昆虫による食害の現場では、複数の分子パターンや傷害を植物が同時に認識すると想定されるが、昆虫認識に関わる分子パターンの報告数は少ない。そこで本研究課題では、植物の昆虫認識分子機構の解明に向けて、イネの害虫であるクサシロキヨトウ食害応答に関わる、複数の分子パターンの探索を試みるとともに、それら分子パターンを同時に植物が認識した際の防御誘導機構について解析している。 初年度から引き続き、クサシロキヨトウ吐き戻し液に含まれる、高分子エリシターとFACs(Fatty acid amino acid conjugates)に注目して解析を行った。これら分子パターンを同時に認識することによって、防御応答の誘導促進が起こることを初年度に見出していたが、本年度も引き続き詳細な応答解析を行った。その結果、2つの分子パターンの同時認識により、相加的あるいは相乗的に誘導される防御応答を複数見出した。また、これら応答においては高分子エリシター画分に主要なエリシター活性成分が含まれていることが示唆された。このように1種の昆虫に存在する複数の分子パターンの関係について解析した例は少ない。本研究により、植物が食害時に複数の分子パーンを認識することで、より強固な防御応答を誘導することが推察され、これら研究結果をまとめ学術雑誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な目的の一つである、複数の分子パターン処理時の応答の解析に関して一定の成果を得られ学術雑誌に発表したことから、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
クサシロキヨトウ吐き戻し液に含まれる昆虫由来分子パターンと、傷害・食害によって誘導されるイネ由来の分子パターン(デンジャーシグナル)との関係について解析を行う。またクサシロキヨトウ吐き戻し液に含まれるエリシターの同定に向けた解析を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画のとおり、分子パターン群認識時の防御応答解析については順調に進展しているが、平成29年度は遅れている課題である、クサシロキヨトウ吐き戻し液中に見出した新規分子パターンの解析を複数のアプローチで行う。
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次年度使用額の使用計画 |
課題の一部を次年度に行うこととなったが、研究課題全体としておおむね順調に進展しており、次年度も使用計画に従い研究を推進する。イネの防御応答の解析に必要な試薬・分子生物学試薬および消耗品の購入に使用する。研究成果の発表のため参加するため、また研究打ち合わせを行うための旅費を手当てする。
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