研究課題
植物の免疫機構において、「分子パターン」と呼ばれる外敵由来あるいは外敵攻撃時に生じるリガンドの認識は、植物が効果的な防御応答を示す上で重要な過程のひとつである。植食性昆虫食害時には、複数の分子パターンや傷害を植物が同時に認識すると想定されるが、昆虫認識に関わる分子パターンの報告数は少ない。本研究課題では、植物の昆虫認識分子機構の解明に向けて、イネの害虫であるクサシロキヨトウ食害応答に関わる、複数の分子パターンの探索を試みるとともに、イネがそれら分子パターンを同時認識した際の防御応答誘導について解析している。最終年度は、クサシロキヨトウがイネを食害する際に関与するイネ由来の分子パターンとして、ペプチド性のデンジャーシグナルOsPep3に注目して解析を行った。その結果、OsPep3をはじめとする複数のOsPepsがイネに対してエリシター活性を有することを示した。さらにOsPep3と唾液由来分子パターンの同時処理により、フェノールアミド蓄積を含む複数の防御応答、およびMAPキナーゼ活性化を含めた防御応答制御に関わる複数のシグナル伝達因子が相加的あるいは相乗的に活性化、蓄積誘導されることを明らかにした。このような昆虫由来分子パターンと植物由来分子パターンの同時処理時の応答解析例は少なく、本研究により、植物が食害時に複数の分子パーンを認識することで、より強固な防御応答を誘導することが推察され、これら研究結果をまとめ学術雑誌に発表した。
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Plant Journal
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/tpj.13883
Journal of Chemcal Ecology
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