がんは我が国の国民の死因の大半を占めているにもかかわらず、有効な治療法が確立されていない。申請者らは、血管弛緩を担うセカンドメッセンジャーとして知られているcGMPのがん細胞特異的にアポトーシス誘導機構を報告した。そこで本研究ではcGMP の抗がん作用のさらなる機構解明を糸口に新規治療戦略の確立を目指した。研究の結果、膵臓癌細胞におけるcGMPの癌幹細胞阻害作用を担うと考えられる候補因子として Liver kinase B1 (LKB1) を見出した。実際にLKB1を阻害したところ、癌幹細胞性が低下することを見出した。これまで、LKB1はがん抑制遺伝子として知られているが、今回我々はLKB1が癌幹細胞性の維持にも寄与していることを発見した。これまですい臓がんにおける PDEの発現について検討した報告はほとんどないため確認を行った。その結果cAMPやcGMPの分解を担うPDE3 がすい臓がんにおいて高発現していることを確認した。また様々ながんにおいても cGMP産生誘導が癌幹細胞性を阻害することを見出した。実際に in vivo においても cGMP産生誘導剤は癌幹細胞性を阻害すること、また転移を抑制することを確認した。
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