研究課題/領域番号 |
15K18824
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
野村 俊尚 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (20722771)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ホンモンジゴケ / 重金属耐性 / コケ植物 / ゲノム編集 / CRISPR/Cas9システム |
研究実績の概要 |
当該年度の研究計画に即し、銅耐性・蓄積能を有する銅苔であるホンモンジゴケへのゲノム編集技術CRISPR/Cas9システムの導入を試みた。まず、ホンモンジゴケのU6SnRNAプロモーター配列を用いたガイドRNA発現用ベクターおよび構成発現プロモーターによるCas9発現ベクターを作出した。葉緑体の分裂に関与するFtsZ2遺伝子をターゲットとして、プロトプラストへの一過的発現と再生および薬剤耐性選抜を行うという方法により、表現型(葉緑体の形態)に影響が生じた株を、5割以上の効率で得ることができた。さらに、単離した表現型の変化した株では、ゲノムDNA上におけるターゲット配列近傍にランダムな欠損および挿入変異が起こっていることも確かめた。また、確立した手法では、2種のガイドRNAを用いた数kbpの欠損導入や、他のセン類であるヒメツリガネゴケにおいても適用可能であることも確認している。ホンモンジゴケ原糸体におけるRNAシークエンスについては、まず本種の生育に悪影響が出ないレベルの銅添加(0.8 mM)培養条件で実施したが、銅の存在により顕著に発現誘導される重金属耐性・蓄積に関連する遺伝子を見出すことはできなかった。一方で、構成的に高発現している転写産物群の中に重金属結合能が推定されるタンパク質をコードするものが見出せている。現在は、上記のゲノム編集技術を用いた候補遺伝子の変異導入株の作出および表現系の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の主要な達成目標であるホンモンジゴケへのゲノム編集技術の導入に成功したことから、計画は順調に進んでいると考えられる。また、確立した手法は、目レベルで系統の異なるセン類(ヒメツリガネゴケ)においても適用可能であることも確認済みである。従って本手法はセン類において広く適用できる可能性が高く、例えば非モデルコケ植物種を材料に用いた植物の環境ストレス耐性や進化に関する研究の発展にも貢献できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画通りに、研究を推進する予定であるが、可能であれば、より高濃度の銅添加処理時におけるトランスクリプトーム解析の実施を予定している。ゲノム編集技術に関しては、確立した手法におけるオフターゲット効果の度合いを確認し、大きな問題があるようであれば、その低減のための各手法の導入も試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬消耗品類購入費には足りない程度のごく少額の残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に生じたごく少額の残金は、翌年度の試薬消耗品類の購入に企てる。
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