本研究は,化学合成したエチニルヘリセンオリゴマーの性質を分子設計によって制御し,自己組織化によって多数の分子が非共有結合によって異方的・三次元的に集合した動的システムおよびマクロ自立物質を構築することを目的としている.この集合システム中において動的で可逆的な二重ラセン‐ランダムコイル構造変化を行うことで,分子長変化を増幅してマクロスケールの伸縮運動に変換する計画である. 今年度は,末端および側鎖にトリエチレングリコール (TEG) 部を有するオリゴマーを用いて,生体に近い水系混合溶媒中において本研究の基盤となる分子レベル現象の詳細を調べた.昨年度までに,末端にTEG部を有するオリゴマーが一般的挙動とは逆の熱応答を示すことを見出した.この現象について,混合する溶媒について広く検討するとともに,組成比に関して検討した.また,熱力学的パラメータを求めるなど詳細を調べ,水分率によって異なる二種類の現象が存在することを示した.また,側鎖にTEG部を有する化合物の熱応答を詳細に調べ,末端にTEG部を有する化合物とは異なり一般的傾向に従うことを,種々の溶媒を用いて確認した. また,本研究の目的を遂行するためにより有効な手法を選択するため,計画の一部を変更し,炭素数128の超長鎖アルカン誘導体を設計した.これは,オリゴマー末端部に連結して分子を異方的に配列させることを念頭に置いている.これまでに,均一分子量の化合物を高純度で合成する方法を検討した.
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