当該年度の初期計画に沿って、ベンジルアレン-内部アルキンの環化異性化反応を鍵反応とする天然物合成及びアレン-アルケン-アルキンを用いる不斉分子内[2+2+2]環化付加反応の天然物合成への応用を試みた。目的の結果を得ることはできなかったものの、関連領域にて以下の3つの新規環構築反応の開発に成功した。 1) 新規C-H活性化を利用したベンジルアレン-内部アルキンの環化異性化反応:ロジウム触媒をベンジルアレン-内部アルキンと処理したところ、ベンゼン環上のC-H結合の活性化を伴った環化異性化反応が進行し、ヘキサヒドロフェナントレン誘導体が一挙に得られることを見出した(本結果は Angew. Chem. Int. Ed. に投稿し、受理された)。 2) アレン-アルキンとアルキンの部分的分子間[2+2+2]環化付加反応:アレン-アルキンとアルキンをロジウム触媒と処理することにより、部分的分子間[2+2+2]環化付加反応が進行し、多置換ベンゼン誘導体が高位置選択的に得られることを見出した。本法においては、アレニンは対応するジインの合成等価体とみなすことができる。しかしそれらを用いる比較対照実験の結果から、アレニンが位置選択性の観点から、[2+2+2]環化付加反応においてジインよりも有用なπ成分として機能することを示すことができた(本結果は Chem. Eur. J. に投稿し、受理された)。 3) アレン-アルケン-アルキンの分子内環化付加反応:ロジウム触媒をアレン-アルケン-アルキンと処理することにより、分子内[2+2+2]環化付加反応あるいは環化異性化反応が進行することを見出した。本法においては、用いるロジウム触媒及びアレン上の置換基が反応性・化学選択性に大きく影響を与えることが明らかとなり、それらを適宜選択することによって、3種類の多環性骨格を作り分けることができた。
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