研究課題/領域番号 |
15K18827
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 善弘 京都大学, 化学研究所, 助教 (90751959)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機化学 / 合成化学 / 有機分子触媒 / 位置選択性 / カウンターアニオン / 糖 / ポリアミン |
研究実績の概要 |
本研究では、生理活性物質を含む多官能基性化合物群の短段階分子変換を可能にする有機触媒システムの構築を目的として研究を行っている。その実現に向け、基質認識型求核触媒から生じる中間体塩の対アニオンを系中で交換させることで、望む官能基変換に応じて中間体の反応活性を制御する。これにより、これまで達成されていない位置選択的分子変換を実現する。基礎的な実験として、求核触媒PPYを用いてカウンターアニオンの違いによる中間体アシルピリジニウムイオンの反応性の差を精査した。その結果、クロリドイオンとカルボキシラートイオンとでは反応性に1000倍程の差がある事がわかった。この知見を活かし、これまで触媒回転数1以下であった位置選択的アシル化条件において、触媒回転数1000以上を実現し、触媒の化学構造を変換しなくても、大幅に触媒サイクルを活性化できる事を示した。さらに、位置選択的に導入したアシル基を足がかりとした官能基変換についても行う事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、アニオン交換に基づく触媒サイクルの活性化という本研究の基盤が築かれつつある。これまでアシルピリジニウムイオンの反応性が定量的に評価された例は無く、重要な成果と言える。また、位置選択的に導入したアシル基を足がかりとした糖類の位置選択的脱酸素化法を開発する事ができた。糖類の4位水酸基はグリコシド結合を介する多糖構築に重要な官能基であり、そのデオキシ体はチェーンターミネータとしての役割が期待できる。これらを迅速に供給できる本手法は、糖関連物質の構造活性相関研究に有効なツールとなり得る。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、前年度に築いた触媒サイクル活性化の知見を活かし、鎖状ジアミンの不斉非対称化や糖類の位置選択的官能基化(アシル化以外)の検討を行う。アミンの非対称化については非触媒経由の反応が競合することが予想されるため、触媒経由の反応のみが主に進行するシステムを精査する。糖類の位置選択的官能基化については、ホスホリル化やスルホニル化等、さらなる官能基変換が行えるような官能基化を徹底的検討する。また、ポリアミンの位置選択的官能基化にも挑戦し、これまであまり有用なビルディングブロックとは考えられてこなかった分子の分子変換の礎を築く。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度購入予定と申請していたHPLC用逆相分取カラムを次年度購入することとした。高極性化合物の検討を次年度に集中して検討することとし、初年度は本研究全体の基盤となる機構解明研究に注力した方が良いと判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、HPLC逆相分取カラムを購入する。これは、初年度で得られた知見を基に高極性化合物等の一般性について広く検討する際、化合物の精製に用いる。
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