今回、単一分子でRGB発光を示すABPX誘導体の創製を目的に、従来の合成法の反応機構解析を行うことで得られた知見に基づき、本色素群の効率的な合成法を開発し、キサンテン環の閉環反応を制御することが、ABPXを効率的に合成する上で重要となる知見を見出した。また発色団の柔軟な構造改変を可能とする新規合成法を開発した。具体的には、レソルシノールのヒドロキシ基にイソプロピル基を導入し、ベンゾフェノン誘導体と 20% メタンスルホン酸/トルエン中で反応させることで、ABPX 誘導体の収率は大幅に改善し、Rhodol 誘導体をはじめとした種々の副生成物を抑制された。またレソルシノールのフェノール性ヒドロキシ基に嵩高い置換基を導入した場合に、ベンゾフェノン誘導体由来のヒドロキシ基から閉環する反応が進行することが明らかとなり、キサンテン環の閉環反応の反応経路を制御することは、Rhodol 誘導体と種々の副生成物の生成を抑制し、ABPX 誘導体の収率を向上する上で有用であることを明らかとした。また反応温度を低温から行うことは、キサンテン環の閉環反応に伴う Rhodol 誘導体 をはじめとした種々の副生成物の生成を抑える上で有用であることがわかった。更に、ジフェニルイソベンゾフラノン誘導体とベンゾフェノン誘導体をメタンスルホン酸を含むジクロロメタン溶液中で反応させることで、非対称のキサンテン環骨格を有する新規 ABPX 誘導体の合成に成功し、バリエーション豊かな誘導体の供給が可能となった。続いてABPX 誘導体について、各種有機溶媒中での蛍光スペクトルを測定した。その結果、スピロラクトン型平衡種は青色、ジカチオン型平衡種は赤色から近赤外域に幅広い発光帯を示した一方で、モノカチオン型分子種は、橙色の蛍光発光を示した。
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