研究課題/領域番号 |
15K18829
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中尾 允泰 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (60550001)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ピペラジノン / 不斉触媒 / 不斉アルドール反応 |
研究実績の概要 |
新反応剤開発および創薬研究のスキャフォールド(足場)として注目しているピペラジノン誘導体を基盤とする新規な不斉触媒の開発を目的として、第一級アミノ基とベンジル基を有するピペラジノン誘導体の化学構造を基盤とした各種新規ピペラジノン誘導体の合成を検討した。その結果、触媒活性に関与すると考えられるアミノ基をより不斉点に近づけた新規二環性ピペラジン-2,5-ジオン誘導体、ピペラジン-2,5-ジオン環の一方のカルボニル基をメチレン基へと変換した新規ピペラジノン誘導体の合成に成功するとともに、一連の誘導体の合成法を確立した。これらの新規ピペラジノン誘導体は、立体選択性は低いながらも不斉アルドール反応を触媒することが明らかとなった。 また、ピペラジノン誘導体と有機金属試薬との反応による新規ピペラジノン-金属錯体化合物の合成を目的に、第一級アミノ基を第三級アミノ基へと変換した新規ピペラジン-2,5-ジオン誘導体を合成した。本ピペラジノン誘導体と各種有機金属試薬の反応を検討した結果、単離可能な金属錯体を得ることは困難であったが、溶液中にてピペラジノン-金属錯体の生成が示唆された。さらに、このピペラジノン誘導体触媒下にプロキラルσ対称環状炭酸エステルの非対称化反応を検討した結果、立体選択的に開環反応が進行することが明らかとなった。 今年度の成果を基盤として、ピペラジノン誘導体のさらなる不斉触媒活性の向上を目的に、アミノ基に加えてスルホンアミド基やカルボキシル基を有する二官能性ピペラジノン誘導体の合成ならびに不斉反応への応用を検討していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画に従い、触媒活性に関与すると考えられるアミノ基をより不斉点に近づけた新規二環性ピペラジン-2,5-ジオン誘導体ならびにピペラジン-2,5-ジオン環の一方のカルボニル基をメチレン基へと変換した新規ピペラジノン誘導体の合成法を確立し、不斉アルドール反応の触媒として応用した。その結果、立体選択性は十分ではないものの新規ピペラジノン誘導体の不斉触媒活性を見いだすことができた。 また、第一級アミノ基を第三級アミノ基へと変換した新規ピペラジン-2,5-ジオン誘導体と各種有機金属試薬の反応を検討した結果、単離可能な錯体を得ることは困難であったが、このピペラジノン誘導体触媒下にプロキラルσ対称環状炭酸エステルの非対称化反応を検討した結果、立体選択的に開環反応が進行することが明らかとなったことから有機触媒としての可能性が示唆された。したがって、ピペラジノン誘導体を基盤とする新規な不斉触媒の合成開発という本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の検討から、有望なピペラジノン誘導体として、ピペラジン-2-オン誘導体ならびに第三級アミノ基を有するピペラジン-2,5-ジオン誘導体を見いだした。現段階では、反応性および立体選択性は十分とはいえず、これは触媒のアミノ基による反応剤の一方のみの活性化が要因と考えられた。したがって、今後の研究の進捗方策として、高い反応性ならびに立体選択性の実現にむけた二つの反応剤の同時活性化を目的に、アミノ基に加えてスルホンアミド基やカルボキシル基を有する二官能性ピペラジノン誘導体を合成し、不斉アルドール反応ならびに不斉森田-ベイリス-ヒルマン反応への応用を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入依頼した物品の納品ならびに参加した学会が3月であったことから、それらの支払いが4月になったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
3月に納品となった物品については実験に使用した。
|