研究課題/領域番号 |
15K18831
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渕 靖史 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (40748795)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 捕捉分子 / 水素結合 / 8-ニトログアノシン / 8-チオグアノシン |
研究実績の概要 |
申請者はジアザフェノキサジン環を基本骨格とした、8-ニトログアノシン(8-nitroG) を効率的に共有結合捕捉するモデル分子“nitroG-Grasp”を開発してきた。プロピルリンカーを有するnitroG-Grasp は有機溶媒中では非常に効率的に8-nitroGを捕捉することに成功したが、水性溶液中のpH7条件下では反応性が非常に低いことが示された。そこで、反応性を向上させることを目的として、チオールまでのリンカー部分に官能基を導入することで固定化した誘導体を設計した。合成した新規nitroG-Grasp誘導体を用いて8-nitroG に対する反応性を調べたところ、pH 7 の水性溶液中においても効率的に反応し、反応性を飛躍的に向上させることに成功した。これに並行し8-チオグアノシンサイクリックモノリン酸(8-thio-cGMP)を捕捉することを目的として、モデル分子“8-thioG-grasp”を設計・合成した。8-thioG-graspには脱離基を導入しており8-thioG からの求核置換によって結合形成させる設計とした。いくつかの炭素数の異なるリンカーの誘導体を検証した結果、脱離基までの炭素数が3、4の誘導体では8-thioGと効率的に反応することが示されたが、炭素数2の誘導体では分子内で環化することを見出した。また8-thioG-graspについても反応性を向上させるための設計として、リンカー部にアリルアルコールを導入した誘導体を合成した。新規8-thioG-graspを用いて捕捉反応を検討したところ、1価銅存在下の中性条件で捕捉反応が進行することを見出した。今後は詳細な反応機構を解明し、蛍光発光プローブの合成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではまず、「nitroG-Graspの反応性向上のための検討」と「8-thioG-graspの反応性向上のための検討」を中期目標としていたが、現段階で両方とも概ね達成していると考えられる。nitroG-Graspについては中性水溶液中での捕捉反応を達成することが出来た。また8-thioG-graspについても金属を介した中性条件での捕捉反応を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
「nitroG-Graspの反応性向上のための検討」と「8-thioG-graspの反応性向上のための検討」の中期目標を達成したため、今後は「リン酸認識部位の最適構造探索」と「捕捉反応部位とリン酸認識部位複合体の合成とin vitro反応検証」に着手する。リン酸認識部位については、サイクレン-亜鉛錯体が有用でないことをすでに検証済であるので、その他の静電相互作用を有する官能基導入を検討する。リン酸認識部位を導入した誘導体を用いて実際に水中での捕捉反応を評価し、反応性が示された場合はタンパク質を用いてin vitroでの捕捉反応についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の購入が予定金額よりも少なかったため、端数分程度の残額が生じたと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は物品費(試薬・溶媒等)に使用する予定。
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