研究実績の概要 |
本研究では生体中核酸系シグナル分子を標的とする水中での特異的捕捉反応プローブの開発を行った。まずシグナル分子として8-ニトログアノシン体と8-チオグアノシン体を標的とした捕捉モデル反応分子を検討した。これらグアノシン誘導体を認識する部位として1,3-ジアザフェノキサジン骨格を利用し、8-ニトログアノシンに対してはチオール基を、8-チオグアノシン体にはクロロアルキル基を導入した機能性分子を設計し、合成した。標的分子に対する捕捉反応を有機溶媒中で検討した結果、それぞれのグアノシン誘導体に対して、水素結合錯体形成を介した非常に効率的に共有結合捕捉できることが示された。8-ニトログアノシンに対する捕捉分子“nitroG-Grasp”については、速度論的解析も行っており、チオールまでのリンカー部の自由度とチオールpKaが反応性を決定していることが判明した。この結果を基にジオキサン環やベンジル基を導入した誘導体を新たに設計・合成した。これらについても8-nitorGに対して捕捉反応を調べた結果、pH7の緩衝液を混合した条件下でも効率的に反応することが示され、捕捉反応部位として有用であることが分かった。最終的にはリン酸認識部位も導入することで、シグナル分子である8-nitro-cGMPの共有結合捕捉分子へと展開する予定である。リン酸結合部位を検討する中で、1,3-ジアザフェノキサジン骨格にサイクレン-亜鉛錯体を導入した分子が、水中において8-オキグアノシントリリン酸(8-oxo-dGTP)に対して特異的に蛍光消光することを発見した。この性質を基に、有用な8-oxo-dGTP検出プローブ(8-oxoGTP Receptor)を開発することに成功した。以上のように本研究では、水中での特異的捕捉反応プローブの創製を目指す中で、新たな機能性分子への展開可能性を見出した。
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