研究課題/領域番号 |
15K18832
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安藤 眞 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (00622599)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遷移金属触媒 / N-ヘテロ環状カルベン / 配位子 |
研究実績の概要 |
申請者が独自に設計したビシクロ環を非カルベン炭素上に配置したN-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子は、活性中心を非カルベン炭素上に設けた遮蔽によって保護する事が特徴であり、これまでのNHCに盛んに用いられて来た活性中心近傍に位置する窒素上の置換基を用いて活性中心を遮蔽する設計とは異なる反応性を見せる事を期待した。 まず、ビシクロNHC配位子を銅錯体とし、触媒能を評価した。その結果、銅の触媒するハロゲン化芳香族のホウ素化反応へ適用すると既存のNHC配位子群をしのぐ活性を示す事を見出した。特にオルト位に置換基を有する嵩高い基質に対する反応性では顕著な差が見られ、ビシクロNHC配位子が活性中心に反応場となりうる空間を広く確保出来ている事が示された。更に安定な銅錯体の作成にも成功し、結晶構造も明らかとした。本銅錯体は窒素上には比較的小さなイソプロピル基を配しているにも関わらず室温空気中で安定であり、骨格に備えたビシクロ骨格によって高い安定性を享受しているものと考えられる。 銅触媒と並行して、ニッケル触媒へ応用し、第三級アルキルGrignard試薬とブロモアレーンとのカップリング反応を効果的に触媒する事を見出した。ビシクロNHC配位子が他の配位子よりも触媒量低減に有効であり、本結果もビシクロ骨格の効率的な遮蔽効果によってもたらされているものと考える。さらに、本反応系に置ける副反応を制御出来る共溶媒も見出した。 現在メソ骨格を非対称化した不斉配位子の合成経路も確立し、ライブラリーを構築しながら、各種不斉反応への適用を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メソ型の配位子を活用した銅錯体およびニッケル錯体がそれぞれホウ素化反応、第三級アルキル基導入反応に有効である事を見出した。それぞれの反応において我々が独自に開発した配位子が一般的なNHC配位子よりも高い触媒活性を示し、安定性が高い事を明示する結果を得た。さらに既存のNHCが比較的苦手とする嵩高い基質における反応性が高い事を見出し、独自の配位子設計によってこれまでの設計では困難である反応を実現しうる可能性を見出した。 メソ型骨格の非対称化に基づいたキラルな配位子の合成経路も確立し、ライブラリー構築および不斉反応への予備的な適用も開始した。 以上、メソ型配位子の特徴を生かした反応開発およびキラル配位子の予備的検討という初年度の計画は概ね達成されていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
メソ型配位子を活用した反応においては、既存のNHC配位子との比較において見出した独自の反応性、特に嵩高い基質における有効性に焦点を絞り検討を進め、NHCの新しい設計戦略の有効性を更に明らかにして行く事を目指す。 メソ型骨格の非対称化によるキラル配位子開発は、ライブラリー構築を進めながら、対象反応の不斉化に取り組む。また、Lewis塩基性置換基の導入による二座型配位子の開発にも展開を試みる。
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