研究課題/領域番号 |
15K18834
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小西 英之 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (20565618)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 毒性ガス / 等価体 / 実用 / 一酸化炭素 / 二酸化硫黄 |
研究実績の概要 |
今年度は、前年度より継続して、(1)一酸化炭素(CO)等価体を用いるC-H結合部位の直接的カルボニル化を伴うフルオレノン類合成法の開発、(2)新規CO等価体を用いる非対象ケトンの新規合成法の開発、(3)二酸化硫黄(SO2)等価体を用いる含硫黄化合物の新規合成法の開発、(4)軸不斉含有ジカルボン酸エステル類の実用的合成法の開発を行った。その結果、以下に示す研究成果を得ることができた。 (1)について、基質一般性の検討とともに反応機構に関する考察を行った。反応機構に関する理解が深まり、反応速度の向上に関して有益な知見が得られたため、現在はfull paperとしての論文をまとめているところである。 (2)について、前年度新たに開発した新規CO等価体を用いて反応条件の検討を行ったところ、収率が中程度まで向上した。 (3)について、ピロ亜硫酸カリウムをSO2等価体とし、アミノ基を有するハロゲン化アリールを基質として用いることで、反応条件のわずかな変更によりスルホンアミドとスルフィンアミドを作り分ける初の触媒的かつ直接的合成法を確立し、その論文が掲載された。本研究では、SO2等価体が一酸化硫黄源として機能することを世界に先駆けて示すことができた。現在は収率の向上と反応機構の理解のため、引き続き検討を行うとともに、一酸化硫黄の挿入反応のさらなる可能性について検討を行っている。 (4)について、容易に両エナンチオマーが入手可能な軸不斉含有ジトリフラートに対し、ギ酸フェニルをCO等価体として用いるダブルカルボニル化法を開発し、その論文が掲載された。本合成法は、有機分子触媒やその合成中間体として近年注目を集める軸不斉含有ジカルボン酸エステルを1工程で与える実用的な手法であり、過去の例とは異なり様々な軸不斉の様式を持つ基質に適用可能な特徴を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに得られた研究結果をもとに、2年目である今年度も引き続き研究を進めた。その結果、軸不斉含有ジカルボン酸エステルの合成法や、スルホンアミドおよびスルフィンアミドの選択的合成法の開発に関して研究内容をまとめることができ、執筆した論文が2報掲載された。さらに、毒性ガスを用いる合成法に関して、新たな知見や研究の方向を見出すことができた。以上の理由により、本研究は計画に従って順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究3年目となる2017年度は以下の4点について検討を行う。 (A)C-H結合の直接的カルボニル化を伴うフルオレノン合成法の開発:反応速度を劇的に向上させる条件が見つかったため、それを用いた基質一般性の検討や反応機構に関する検討を行う。(B)新規CO等価体の創製とそれを用いる非対称ケトン合成法の開発:これまでの検討で求核性の副生成物を生じない新規CO等価体を見出しているが、この他に熱や光など物理的刺激でCOを生成できるような新しいタイプのCO等価体の設計および合成を行う。また、非対称ケトン合成法についてさらなる条件検討を行い、収率を向上させる。(C)SO2等価体を用いる含硫黄化合物合成法の適用拡大および反応機構の解明:最近開発したスルホンアミドおよびスルフィンアミドの選択的合成法における基質一般性の拡大と、反応機構の詳細な検討を行う。特に、SO2等価体が一酸化硫黄源として機能する機構に関しては重点的に検討を行い、計算化学的手法も利用してスルフィニル基導入反応の開発につなげる。(D)化合物ライブラリー合成や自動合成を志向した合成手法の開発:等価体から毒性ガスが生じる機構を詳細に調べ、開放系での反応の実現に向けて条件検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行するために必要な装置や器具類の購入が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬やガラス器具、溶媒等の消耗品の購入の他に、研究室内で使用している真空ポンプや乾燥用オーブンが経年劣化等により交換の時期を迎えているため、研究に必要なこれらの装置の更新を行う予定である。
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