研究課題
マングロマイシンAは、炭素15員環内にδ-ラクトン、多置換テトラヒドロフラン環を有する三環性の歪んだ構造を有する新規天然物で有り、アフリカ睡眠病の原因虫であるトリパノソーマに著効を示すことから、新規薬剤リードとして有望である。しかし、マングロマイシンAの絶対立体配置は不明であることから、カスケード反応を駆使したマングロマイシン類の効率的な合成経路を確立し、絶対立体配置の決定および構造活性相関研究を立案した。初年度は、立体選択的なβラクトンの構築と、4置換炭素を含む多置換テトラヒドロフラン環の構築に取り組んだ。当初、ルイス酸触媒と有機分子触媒を組み合わせた条件下、アルデヒドと酸クロリドから、トランス配置のβラクトンの合成を検討したが、いずれもβラクトン体与えなかった。さらに、条件検討を重ねた結果、Al-Salen錯体を用いることでトランス配置のβラクトンを立体選択的に合成できた。一方、多置換テトラヒドロフラン環は、Evansアルドール反応を鍵に合成したアルキニルアルコールのエーテル・アルキル化反応カスケード反応による合成を立案していた。しかしながら、Evansアルドール付加体へのアルキニル基の導入が困難であったため、予定を変更し、γ-ヒドロキシケトンのエーテル環化・アルキル化カスケードによる多置換テトラヒドロフラン環の構築に取り組んだ。Evansアルドール付加体から誘導したγ-ヒドロキシケトンに、酸フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体存在下、ビニル基が連結したシリルエノールエーテルを作用させることで、四置換炭素を含む多置換フラン環を立体選択的に合成出来た。さらに、両フラグメントのアルドール反応による連結に成功し、マングロマイシンを構成する炭素鎖を全て有する鎖状基質を合成した。現在、マングロマイシンの大環状炭素環の構築に取り組んでおり、その全合成が目前となっている。
2: おおむね順調に進展している
初年度の計画通り、立体選択的なトランス二置換βラクトンの構築と、四置換炭素を含む2,2,4,5-四置換テトラヒドロフラン環の立体選択的な構築に成功した。さらに、両フラグメントのアルドール反応による連結に成功し、マングロマイシンを構成する炭素鎖を全て有する鎖状基質を合成している。現在、既に28年度に計画していた大環状炭素環構築に取り組んでおり、予定通りマングロマイシンの全合成が目前に迫っている。
今後は、当初の予定通り、βラクトンを有するα-ハロエステルの分子内Reformatsky型Dieckmann縮合カスケード反応に取り組み、マングロマイシンAの初の全合成を達成し、その絶対立体配置を決定する。もし、困難であった場合は、βラクトンの代わりに、酸クロリドやアルデヒドを用いた段階的な炭素大員環の構築に取り組み、マングロマイシンの全合成を達成する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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