研究課題
マングロマイシンAは、炭素15員環内にδ-ラクトン、多置換テトラヒドロフラン環を有する三環性の歪んだ構造を有する新規天然物で有り、アフリカ睡眠病の原因虫であるトリパノソーマに著効を示すことから、新規薬剤リードとして有望である。しかし、マングロマイシンAの絶対立体配置は不明であることから、カスケード反応を駆使したマングロマイシン類の効率的な合成経路を確立し、絶対立体配置の決定および構造活性相関研究を立案した。昨年度までに、Al-Salen錯体を用いたtrans-β-ラクトンの立体選択的合成、γ-ヒドロキシケトンのエーテル環化・アルキル化カスケードによる多置換フラン環の立体選択的合成、両フラグメントのアルドール反応による連結に成功し、マングロマイシンを構成する炭素鎖を全て有する鎖状基質を合成している。本年度は、前年度合成したアルドール付加体からマングロマイシンAの初の全合成に取り組んだ。ジアステレオ選択的な3-ヒドロキシケトンの還元、マクロラクトン化を鍵に、15員環マクロラクトン体を合成した。続いて、15員環のβ-アシロキシエステルに対し、THF中、加熱還流条件下、LiHMDSを滴下することでDieckmann環化が進行し、ジヒドロピロン部を構築することができた。その結果、マングロマイシンAに特徴的な三環性炭素骨格を合成することができた。得られた三環性化合物は、そのジヒドロピロン部がα-ピロンへ空気中で容易に酸化された。そこで、素早く水酸基の保護基を除去し、マングロマイシンAと同様の三次元立体配座を有する誘導体へ変換することでジヒドロピロン部の酸化を抑制することができた。最後に、ボロキシンを用いた1,2-ジオールの保護、第二級水酸基の酸化、脱保護を経て、マングロマイシンAの初の全合成を達成し、不明であった絶対立体配置を決定することができた。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Organic Letters
巻: 19 ページ: 230-233
10.1021/acs.orglett.6b03512
Journal of Antibiotics
巻: 70 ページ: 680-684
10.1038/ja.2017.31
Chemical and Pharmaceutical Bulletin
巻: 54 ページ: 856-864
10.1248/cpb.16-00205
巻: 54 ページ: 907-912
10.1248/cpb.c16-00037
http://seibutuyuuki.sakura.ne.jp/index.html