光異性化するアゾ構造を持つリンカーで二つの金属ポルフィリンを連結したポルフィリン二量体を構築し、アルケンやCH結合の酸化反応を指標としてこの二量体が光スイッチ機能を持つ酸素酸化触媒として機能することを明らかにする。これらの知見をもとに光スイッチを利用した動的制御による選択的な反応及び不斉触媒反応の新規な方法論を確立することを目的として遂行するものである。 これまでに、提案するポルフィリン二量体の一例として、リンカーに不斉構造を持つポルフィリン二量体および二つのポルフィリンをアジン骨格で連結したポルフィリン二量体を構築し、ポルフィリン二量体への窒素原子を含む様々な骨格のリンカーユニットの導入法を確立した。また、本年度は、ポルフィリン二量体の原料として利用可能なアミノポルフィリンの効率的合成法を開発した。さらに、新規な触媒分子としてアルキンへの付加環化反応を触媒するRuを中心金属に持つポルフィリンをエステル結合で連結したRuポルフィリン二量体を構築した。この二量体をモデル分子として用いて触媒反応へのリンカーユニットの影響について検討し、この二量体が環化反応を触媒することを明らかにし、二つの金属ポルフィリンを適切なリンカーで連結することによって新規な触媒が開発できる可能性を見出した。現在、引き続きポルフィリン二量体の触媒としての適用について検討している。 また、本研究に関連して、Ni触媒を用いたmeso-ブロモポルフィリンとシリル亜鉛反応剤とのカップリングによる効率的なポルフィリンのmeso位へのシリル基導入反応を開発した。さらに、このシリル基は、緩和な条件での酸化、ハロゲン化、及びクロスカップリング反応により官能基変換することができ、meso-シリルポルフィリンが様々な機能を持つポルフィリンを構築する上で有用な合成中間体として利用できることを明らかにし報告した。
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