アレニルスルホン及びアクリロニトリルをNHC前駆体及び塩基より生じるNHC存在下反応させたところ、炭素環式化合物が31%収率ながら得られた。 そこで、更なる収率の向上を目指し、アレニルスルホンとベンジリデンマロノニトリルを用いて極性転換型γ付加反応の検討を行った。反応を行ったところ、期待した環化体とは結合様式の異なる炭素環化合物が得られた。各種NMRスペクトルからでは反応成績体の構造確定が困難であったため、X線結晶構造解析を用いて構造を決定することとした。臭素原子を導入したベンジリデンマロノニトリルを用いて反応成績体の結晶性を向上させ、X線結晶構造解析により構造を確定することに成功した。 得られた化合物の構造をもとにその生成機構について考察したところ、興味深いことにNHCの求核付加により開始される、スルホニル基の転位を伴った炭素環構築反応の機構が推測された。想定した反応機構の作業仮説に従って反応条件の最適化を行った。NHC前駆体、塩基、溶媒、及び触媒量の検討を行った。その結果NHC前駆体を3 mol %、塩基として炭酸セシウム、溶媒としてTHFを用いることで、この環化反応の化学収率が91%まで向上することを見出した。 基質一般性の検討を開始し、現在3種類の基質にて反応が良好な収率で進行することを見出した。 一方で、NHC触媒を用いる隣接ジオール類のモノアシル化反応が良好な収率、選択性で進行することを見出した。反応条件の最適化を行い、基質一般性の検討を行った。得られた研究成果をまとめてSynthesis誌に投稿した。
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