研究課題
平成27年度までに、Gタンパク質共役型受容体であるβ2アドレナリン受容体とμオピオイド受容体について、特定のシグナル伝達経路を選択的に活性化するバイアスリガンドを含む、様々なリガンドが結合した状態のNMRスペクトルを取得した。その結果、膜貫通領域の構造平衡が、シグナル伝達の強度や選択性を決定していることを明らかにした。以上のように、当初の研究計画は概ね平成27年度までに完了したことから、平成28年度は、Gタンパク質共役型受容体のシグナル制御機構をより詳細に解析するため、以下の2項目を実施した。1.δオピオイド受容体のNMR解析δオピオイド受容体について、メチオニンメチル基を選択的に13C標識し、その周囲を2H標識することで、メチオニンメチル基を選択的に観測する方法を確立した。この方法を用い、μオピオイド受容体と同じ位置にメチオニンを変異導入した上で、リガンド依存的な化学シフト変化を観測した。その結果、μオピオイド受容体と同様の化学シフト変化がδオピオイド受容体でも観測できた。このことは、構造平衡によるシグナル伝達制御機構がGPCR一般に共通であることを示している。2.アラニン残基をプローブとした空間分解能の向上以上の解析は、メチオニンメチル基をプローブとして進めてきたが、メチオニン残基はGタンパク質共役型受容体の膜貫通領域に10残基程度しか存在せず、構造変化をとらえる上で、空間分解能が低いことが問題であった。そこで、新たにアラニンメチル基をプローブとすることとした。Gタンパク質共役型受容体の発現に必須な昆虫細胞発現系を用いて、アラニンメチル基を選択的に13C標識し、周囲を2H標識する方法を新規開発した(Minato et al., PNAS, 2016)。この方法をGタンパク質共役型受容体の解析に適用し、その有用性を示した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 113 ページ: 4741-4746
10.1073/pnas.1600519113
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 33690
10.1038/srep33690
http://ishimada.f.u-tokyo.ac.jp/public_html/index_j.html