研究課題/領域番号 |
15K18848
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
小川 法子 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (80409359)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 花粉症治療 / 経鼻投与製剤 / 核酸医薬 |
研究実績の概要 |
花粉症は、一度発症すると長く付き合っていかなければならない疾患であるため、副作用のない治療薬ならびに患者の「生活の質」の低下を緩和できる製剤が求められている。デコイ核酸医薬は、炎症に関連した遺伝子群を効率よく制御することが可能であり、副作用が既存の薬物と比べて少ない。そこで本研究では、デコイ核酸医薬を主薬として、花粉症治療を目的とした鼻局所投与製剤を企画した。デコイ核酸医薬の細胞導入量を向上させるため、高分子ナノ粒子の薬物保護能と組織浸透能を利用し、さらに鼻粘膜への付着滞留性を有するナノ粒子の設計を行う。本年度は、デコイ核酸医薬のナノ粒子化とマクロファージ様細胞によるin vitro評価ならびにin vivo評価のためのモデル動物作成を行った。 はじめに、デコイ核酸医薬の乳酸・グリコール酸共重合体ナノ粒子を水中エマルション溶媒拡散法にて作製した。これまでに、キトサンで表面修飾したナノ粒子が静電的な相互作用により粘膜への侵入性・付着性を著しく向上することを明らかとしていることから、ナノ粒子表面にキトサンによる修飾を施した。次に、細胞内に導入されたデコイ核酸医薬の有効性を評価するために、マクロファージ様細胞を用いて、調製したナノ粒子の炎症性サイトカインの放出に対する抑制効果を評価した。実験の結果、デコイ核酸医薬含有ナノ粒子の炎症性サイトカイン産生抑制効果を確認できた。さらに、in vivo 評価系として、アレルギー性鼻炎モデル動物を作成した。Wistar系ラットに、抗原として卵白アルブミンを、アジュバントとして水酸化アルミニウムゲルを投与して能動感作し、モデル動物を作成した。感作の確認をELISA法で行った結果、感作が十分ではなかったため、実験動物を免疫応答性の良いことで知られているBrown Norway系ラットに変更し、引き続きモデル動物の作成を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、デコイ核酸医薬のナノ粒子化とデコイ核酸医薬のマクロファージ様細胞によるin vitro評価ならびにin vivo評価のためのモデル動物作成を行った。 デコイ核酸医薬の乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA) ナノ粒子を作製し、さらに、ナノ粒子表面にキトサンによる修飾を施した。実験過程では凝集等が生じたが、処方改良した結果、粒子径200 nm程度で正電荷にチャージしたナノ粒子を調製することができた。また、細胞内に導入されたデコイ核酸医薬の有効性を評価するために、マクロファージ様細胞である培養細胞Raw264を用いて、調製した表面修飾デコイ核酸医薬含有PLGAナノ粒子の炎症性サイトカインの放出に対する抑制効果を評価した。実験の結果、調製したナノ粒子の炎症性サイトカイン産生抑制効果を確認できた。主薬であるデコイ核酸医薬は、アトピー性皮膚炎、局所的疾患などの免疫疾患治療および炎症治療の標的分子として注目されている。本研究では、デコイ核酸医薬が花粉症に付随する炎症である鼻血管透過性亢進をはじめとした症状に効果を示すことを評価するため、in vivo 評価系として、アレルギー性鼻炎モデル動物を作成した。Wistar系ラットに、抗原として卵白アルブミンを、アジュバントとして水酸化アルミニウムゲルを投与して能動感作し、モデル動物を作成した。感作の確認をELISA法で行った結果、感作が十分ではなかったため、実験動物を免疫応答性の良いことで知られているBrown Norway系ラットに変更し、また、抗原とアジュバントの投与量も精査して、引き続きモデル動物の作成を行っている。モデル動物作成については、現在も継続中であるが、デコイ核酸医薬のナノ粒子化とデコイ核酸医薬のマクロファージ様細胞によるin vitro評価は順調に進展しているため、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
はじめに、免疫応答性の良いことで知られているBrown Norway系ラットに抗原とアジュバントの投与を行いアレルギー性鼻炎モデル動物の作成を行う。感作の確認は、ELISA法でIgE抗体量を測定することで行う。感作が十分でない場合は、抗原とアジュバントの投与の追加等を行う。アレルギー性鼻炎モデル動物の作成法を確立した後に、デコイ核酸医薬含有表面修飾ナノ粒子の抗炎症効果を評価する。評価方法として、鼻腔還流法と組織観察を予定している。鼻腔還流法は、抗原溶液を鼻腔に還流させることで鼻粘膜を刺激し、鼻血管からの赤血球の漏出を色素定量により評価する方法である。さらに安楽死させたラットの鼻中隔を採取し、青色色素量を定量することでも鼻粘膜炎症を評価する。また、アレルギー性鼻炎モデル動物に対して投与製剤を経鼻投与し、一定時間後に組織の剥離を行い、共焦点レーザー顕微鏡等による観察を行い、治療効果について評価する。投与製剤は、デコイ核酸医薬含有表面修飾ナノ粒子を、生理食塩液をはじめとする分散液に分散することで調製する。なお、対照にはデコイ核酸医薬非含有ナノ粒子を用いる。十分な抗炎症効果が得られない場合は、ナノ粒子の処方検討を行うとともに、温度感受性高分子等で成る投与用基剤をナノ粒子の分散液投与後に投与することで、製剤の粘膜付着を図ることを検討する。また、製剤投与-抗炎症評価の期間の違いによるデコイ核酸医薬の抗炎症作用の違いについても評価する。モデル動物での評価結果に伴い、ナノ粒子および投与製剤の処方設計を適宜行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験用動物購入の際に、実験計画と動物の週齢を合わせる関係で次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
ナノ粒子の調製、粒子表面を修飾する各種高分子、粒子のマーカー、薬物などを購入する。また調製したナノ粒子の細胞への侵入性、取り込み、滞留性の評価実験などを行うため、細胞を維持・培養するための消耗品も購入する。さらに、動物実験を実施するため、実験用動物ならびに動物実験に用いる消耗品を購入する。さらに、本研究で得られた成果を学会で発表する目的で出張経費を、また投稿論文として発表するために論文の別刷などの諸経費を計上している。
|