本研究は、間葉系幹細胞にがん抑制機能を付与することで、間葉系幹細胞の腫瘍集積性を応用した新規がん標的治療法の確立を目的とするものである。最終年度である28年度はこれまでに確立した細胞機能化法を用いて、間葉系幹細胞にがん抑制機能を付与するとともに、がん細胞に対する増殖抑制効果を評価した。まず、マウス間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞に対して、抗がん剤であるドキソルビシンの修飾を試みたところ、ドキソルビシンが直接C3H10T1/2細胞に作用することで、修飾段階でC3H10T1/2細胞の生存率が著しく低下した。そこで、ドキソルビシンのC3H10T1/2細胞に対する影響を回避するために、ドキソルビシンをリポソームに封入し、ドキソルビシン封入リポソームのC3H10T1/2細胞表面への修飾を試みたところ、C3H10T1/2細胞の生存率には影響を与えずに、細胞表面にドキソルビシン封入リポソームを効率良く修飾できることが明らかになった。そこで、ドキソルビシン封入リポソームを修飾したC3H10T1/2細胞をルシフェラーゼ発現マウス大腸癌細胞株であるcolon26/Luc細胞と共培養したところ、未処置のC3H10T1/2細胞と共培養した群と比較して、colon26/Luc細胞の増殖を著しく抑制することに成功した。一方、強力ながん増殖抑制効果を有するinterferon-gamma遺伝子を発現するC3H10T1/2細胞を用いてcolon26/Luc細胞の増殖抑制効果を評価した。その結果、interferon-gamma発現C3H10T1/2細胞とcolon26/Luc細胞を共培養することで、colon26/Luc細胞の増殖を著しく抑制することに成功した。以上、細胞表面修飾法及び遺伝子導入法により間葉系幹細胞に対してがん抑制機能を付与するとともにがん細胞の増殖抑制に成功した。
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