研究実績の概要 |
現在、我が国のみならず世界各国では核酸医薬の開発が盛んである。核酸医薬は低分子化合物の様に高いコストパフォーマンスを持ち、抗体医薬の様に高い特異性を持つという、2つの利点を併せ持った医薬品として知られている。その核酸医薬候補の1つである、1本鎖RNA及び人工核酸は細胞内に導入する際にリポフェクション試薬等のキャリアを必要としないというすぐれた特徴を持つ事が知られている。しかし、今日に至るまでその詳細な細胞内導入メカニズム(gymnosisメカニズム)はあまりよく知られていない。本研究の目的は、リポフェクション試薬を使用しない1本鎖RNA及び人工核酸の細胞内導入機構の解明を行うことである。平成28年度は研究実施計画に記載してある(2 a,b)内在性SIDT1,2ノックダウン及びノックアウトにおける条件での解析に関する研究、(3)SIDT1,2遺伝子の細胞内局在解析に関する実験を実施した。(2 a,b)では、2つの違う配列のsiRNAによって、内在性SIDT2をノックダウンさせたHeLa細胞においては、miRNA-16を標的にしたアンチセンスオリゴのアンチセンス効果が弱まることが確認された。また(3)に関しては、HeLa細胞においてSIDT2は大部分がリソソームの膜上に発現しており、一部分が細胞膜上にも発現していることを見出した。今年度と前年度の研究の結果から、SIDT2は1本鎖RNA及び人工核酸の細胞内への取り込みに関与していることが示唆された。
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