研究課題/領域番号 |
15K18856
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平田 祐介 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10748221)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ASK1 / ユビキチン化 / Roquin-2 / TRIM48 / 免疫応答 |
研究実績の概要 |
Roquin-2またはUSP9Xの培養細胞における過剰発現系・発現抑制系で、様々な炎症性刺激を行なった場合の免疫応答について解析を行なったところ、Roquin-2は、LPS刺激時にTLR4の下流で誘導される免疫応答の強力な抑制作用を有することを見いだした。さらに、Roquin-2欠損細胞を作製し、このときの免疫応答誘導に関わる各シグナル伝達経路の活性化について評価したところ、NF-κB、p38、JNK経路のいずれも活性化が顕著に亢進していた。現在、この興味深い新規現象に着目し、Roquin-2のASK1ユビキチン化制御を介した免疫応答調節機構について、次年度に予定していたin vivoの実験系への応用を含め、詳細な解析を遂行中である。 また、ASK1活性化に関わるユビキチン化酵素として、以前に実施したsiRNAスクリーニングによってRoquin-2と同様に挙がってきたTRIM48について、ユビキチン化のターゲットとなる分子同定のため、網羅的な結合因子探索を行なった。その結果、あるASK1の活性化抑制因子をTRIM48の新規結合因子として同定し、詳細な解析から、TRIM48はこの活性化抑制因子のユビキチン化を促進し、分解に導くことで、ASK1の活性化を促進する作用を有することを見いだした。さらに、TRIM48の発現抑制時には、酸化ストレス誘導性のASK1依存的な細胞死が有意に抑制され、この抑制効果がさらに活性化抑制因子を発現抑制することで認められなくなることを見いだしており、実際に生理的にもTRIM48がASK1活性化制御に重要な寄与を果たしていることが示唆された。現在、TRIM48によるASK1活性化制御が、ASK1の過剰な活性化のみの抑制に応用可能か否か、in vivoでの実験への応用を見据えつつ、詳細に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、Roquin-2およびUSP9Xを介したASK1のユビキチン化制御機構について、in vitroの解析を中心に行なうことで分子機構の解明を目指す予定であったが、現在この解析は非常に難航している。その原因として、これらのユビキチン化関連酵素以外の別の因子の介在が想定されてきているため、研究計画に記載したように、Yeast three-hybridなどの手法により、その介在因子の同定を目指している。そこで代替案として、Roquin-2およびUSP9Xが、実際にASK1を介した細胞応答の制御に関与するか否か検証するため、様々なストレス刺激時のASK1依存的な細胞応答について評価を行った結果、Roquin-2が、LPS刺激時のTLR4下流での免疫応答を強く抑制していることを見いだした。このとき、ASK1依存的に活性化されるp38が、Roquin-2によって著しい活性化の抑制を受けていることを見いだしたため、現在はRoquin-2によるASK1活性制御を介した免疫応答調節について着目した解析を行うに至っている。 さらに、ASK1活性化に関わるユビキチン化酵素として、Roquin-2と同時にsiRNAスクリーニングで同定していたTRIM48が、あるASK1活性化抑制因子のユビキチン化・分解を介して、ASK1の活性化を促進していることを明らかにした。現在は、TRIM48によるASK1の活性制御機構について、さらに詳細な解析を進めることにより、ASK1の過剰な活性化のみを抑制可能か否かを検証し、実際にin vivoの病態モデルへの応用を目指して研究を進行中である。 以上のように、難航している計画もあるが、Roquin-2やTRIM48を介したASK1活性制御については予想以上の進展が認められており、総合的におおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続きRoquin-2およびUSP9XによるASK1ユビキチン化制御機構の解明を目指し、ユビキチン化制御の介在因子の同定を目指す。また、初年度で解析が進んだRoquin-2およびTRIM48によるASK1活性制御に着目し、ASK1の過剰な活性化のみを抑制することで、ASK1関連疾患を効果的に治療可能か否か検討を行なう。 Roquin-2による免疫応答抑制作用は非常に強力で、Roquin-2欠損時には、LPS刺激時のシグナル伝達の活性化レベルの著しい亢進、あるいはIL-6などの炎症性サイトカイン発現誘導レベルが数10倍程度上昇が認められるが、これはA20やCyldといった代表的な免疫応答抑制因子と同等、あるいはそれ以上の強力な免疫応答抑制作用をRoquin-2が有することを示唆している。この現象が、Roquin-2欠損によるASK1の活性化の過剰な亢進によるものであるか否か検証した上で、in vivoのLPS誘導性敗血症などのマウスモデルを利用し、実際のASK1関連疾患への応用を見据えた解析に移行したい。 また、TRIM48については、ASK1活性制御機構とその生理的意義について、初年度でその一端が解明できたので、まずはASK1の過剰な活性化を抑制可能か否か検証を行い、その結論を踏まえ、in vivoのASK1関連疾患モデルの解析に移行する。TRIM48のユビキチン化ターゲットであるASK1活性化抑制因子は、癌の発症・進行への促進的な寄与について数々の報告があり、実際の癌組織での発現上昇の報告も存在するが、その具体的な分子機序については、不明な点が多い。このASK1活性化因子が、ASK1の活性化抑制による癌細胞の細胞死抑制によって、癌の増悪化を引き起こしている可能性が想定されるため、特に癌との関連の解析を見据えながら、TRIM48について引き続き解析を行っていく。
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