研究課題/領域番号 |
15K18858
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
日吉 裕美 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10406530)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 脳腫瘍 / アルギニンメチル化酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では、脳腫瘍におけるアルギニンメチル化酵素(PRMT)の役割を解明することを目的としており、当該年度は「PRMTの発現制御が脳腫瘍培養細胞に与える影響」について研究を行った。 まず、星細胞種(アストロサイトーマ)である U251MG 細胞、神経膠芽腫(グリオブラストーマ)である A-172 細胞および T98G 細胞を用いて、脳特異的に発現している PRMT である PRMT8 の mRNA 発現量をリアルタイム PCR 法により検討した。これまでの知見通り、ヒト正常脳組織において PRMT8 mRNA の発現が認められた。しかしながら、神経膠腫細胞株である U251MG、A-172、T98G いずれの培養細胞においても、 PRMT8 mRNA の発現は認められなかった。これは、癌遺伝子の発現プロファイルを扱ったデータベースである Oncomine を用いた解析からも同様の結果が得られた。次に、タンパク質レベルでの PRMT8 発現を検討するため、ウェスタンブロット法を行った。その結果、mRNA の発現同様、ヒト正常脳組織においては発現が認められたが、神経膠腫細胞株である U251MG、A-172、T98G いずれの培養細胞においても、その発現はほとんど検出できないレベルであった。 以上の結果より、脳腫瘍培養細胞において PRMT8 の発現が負に制御されていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PRMT ファミリーは非常にホモロジーが高いため、タンパク質発現を検討するためのウェスタンブロット法に用いた PRMT8 抗体に問題があり、研究が停滞した。発現ベクターを用いた過剰発現やsiRNAによる発現抑制などの実験を重ねたところ、その抗体は PRMT8 特異的ではなく、PRMT1 を認識していることが判明した。最終的には、PRMT8 特異的に検出できる抗体を見つけることができたため、タンパク質発現について検討を行うことができたが、今年度の計画として当初予定してた、PRMT8 の発現制御による細胞増殖や浸潤への影響について検討を行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に計画していたが実施できなかった「PRMT8 の発現制御による細胞増殖や浸潤への影響」について、まずは検討を行う。脳腫瘍培養細胞において PRMT8 の発現が抑制されていることから、発現ベクターを用いて PRMT8 を細胞に強制発現させた際に、細胞増殖や浸潤にどのような影響が見られるか検討する。これにより、PRMT8 の脳腫瘍細胞への作用が明らかになると考える。また、脳腫瘍細胞においてPRMT8 の発現が負に抑制されていることが示唆されたことから、PRMT8 自身の発現制御メカニズムや、PRMT8 によってメチル化されなくなった標的タンパク質が脳腫瘍に及ぼす影響について、研究を進めていきたいと考えている。
|